WALL-Eあらすじ

 PixarによるフルCGアニメ映画「WALL-E(2008)」のあらすじについてまとめた記事です。別な記事で考察をするために書き出したのですが、映画の描写を詳細に書き出してしまったため、独立記事になりました。

 主に人間とロボットとのかかわり合いを中心に記述しています。

はじまり

 世界中をBuy n Large社(以下、BNL)が支配した世界。巨大なスーパーの経営から、あらゆる商品の提供がBNLによって行われ、世界中の広告がBNLのもので覆い尽くされていた。BNLはその経済規模を広げ、ガソリンスタンドなどのライフライン、そして銀行、独自通貨の発行まで担っていた。

 地球上は大量消費の果てにゴミだらけとなり、地球の衛星軌道上もスペースデブリまみれでケスラーシンドロームもびっくりの散らかり具合。地球の表面は大量のごみの山と大気汚染に満ち、青空はなく、ビルのように見えるものはうず高く積まれたゴミの山々。

 打ち捨てられた新聞は、地球上にあふれかえるゴミ問題について、世界大統領が緊急事態宣言を発令したとの文字が踊る。

 1950-60年代のCMを思わせる軽快なジングルが、荒廃した無人の町に響き渡る。

Buy n Large is your super store
we've got all you need and so much more

Happiness is what we sell
That's why everyone loves BNL

 「WALL-Eがゴミを片付けます!」と宣言する看板と、故障して動かなくなった清掃ロボットWALL-Eたちが無数に転がっている景色。近くにはWALL-Eたちが集めたゴミを処理していたであろう多くの巨大なシステムが、もはや駆動しないまま放置されている。

 BNLが経営する駅の前で、軽快な口調で語るCMが自動再生で流れる。

「地球がゴミだらけ?ならば広い宇宙へ飛び出そう!BNL宇宙船(star liner)は毎日運行!あなたの留守中にお片付けします!」

BNL船団の最高峰、宇宙船Axiomで、5年間の豪華クルーズを。24時間ロボットがお世話します。艦長とオートパイロットが素晴らしい旅をお手伝い。エンターテインメントも盛りだくさん。艦内ではホバーチェアがご利用できますので、歩く必要もございません。Axiomは夢のstar liner!」

世界大統領「BNLの旅で宇宙は最高の楽しい場所(fun-tear)へ!」

(Because, at BNL, space is the final "fun"-tier.)

 町にはもはや人の気配はない。そんな世界に共食い整備の果てにただひとりだけ生き残り、ごみ処理作業を続けている清掃ロボット、それが主人公のWALL-Eだった。

地球を飛び出す

 ひとりで暮らしていたWALL-Eの元に、地球上に植物が生えたかどうかを探索しにきたロボットEVEがやってくる。これまでずっと一人きりだったWALL-EはEVEに心惹かれてしまう。彼女に植物を手渡したところ、彼女は植物保存のため休眠状態に陥る。WALL-EがEVEを毎日大切に守りながら過ごしていたところ、ある日探査船が戻ってくる。EVEを迎えに来たのだ。EVEと別れたくないWALL-Eは探査船にしがみつき、探査船と共に宇宙へと飛び出す。探査船は巨大な宇宙船Axiomに収容された。

宇宙船の中の人類の様子

 Axiomでの700年の宇宙航海の間に、人類の体格はかなり変化していた。全員がホバーチェアを利用し、自ら歩くこともない。食事は全てストローから吸引するドリンクばかりで、自ら体を動かして運動することもない。船内の低重力の影響から骨密度は低下し、骨格は退化し、極端に肥満、そして短足に変化している。赤ん坊も乳児期からロボットにより養育されている。

 ホバーチェアから転落し転倒すると、自力で起き上がることもできない。しかしそんな誰かへの関心すら人々は持ち合わせておらず、転んだ当人もただロボットが救助に来るのを待つことしかできない。

 船内はBNLの広告で埋め尽くされているが、人々は画面に夢中で通りすがる景色に視線を向けることはない。艦内にプール施設があることにさえ気づいていない者もいる。人々は互いに触れ合うことも、直接会話することすらしない。バーチャルでのビデオチャット越しに、この退屈な生活への不平不満を口々に喋り続けているのだった。

Buy N Large. Everything you need to be happy. Your day is very important to us.

 色とりどりの鮮やかな広告が瞬く中、語りかけるような放送が艦内に響く。

 何もかもが満ち足りている700年のAxiom生活だが、恵まれているが代わり映えのない日々に人々は(艦長も含め)退屈していた。

宇宙船Axiomの中で

 Axiomでは、植物探査ロボットが光合成する植物を採取した場合、それは「地球上が居住可能空間になった」と判断する根拠となり、それを合図に地球へと帰還する予定だった。しかしこれまでに探査ロボットが植物を持ち帰ったことはない。この度、航行700年目にして初めて、EVEが苗を持ち帰ったことで地球帰還プログラムが初めて起動し、「再植民地化計画(Operation Recolonize)」が始動することになった。

 しかし、EVEは命令どおり植物の苗を持っていったはずだったが、その植物の苗がなぜか無くなってしまう。地球帰還プログラムは一旦中止になってしまったが、今の生活に退屈しきっていた艦長は、これをきっかけに地球に対する興味を持ち始めていた。

 なんやかんやしている内に、「発見された植物を抹消しようとしている」ロボットたちが居ることが判明。そこから植物の苗を奪い返し、皆で協力し艦長の元へと届ける。しかしオートパイロットのAUTOがそれを没収しようとしていた。理由は約700年前に世界大統領により発令された極秘命令、「地球の帰還阻止(コードA113)」。

「オートパイロットの諸君。悪い知らせだ。地球浄化作戦は失敗に終わった。汚染レベルが高いため、地球に住むことはできない。残念だが、再植民地化計画(Operation Recolonize)は中止。だから、航行を続けるように。この問題を解決するより、宇宙に居続けたほうが楽だ(Rather than try to fix this problem, it'll just be easier if everyone remains in space.)。」

「それでは命令A113を変更する。オートパイロットに告ぐ。全てを指揮し、地球には戻るな。繰り返す。地球には戻るな(Do not return to Earth)。」

 AUTOはこれまでの約700年間、このA113の命令を遵守し続けてきたのだった。

地球に戻ろう

 約700年前に出されたA113の頃とは状況が変わり、ついに地球は植物が育成できる環境になった。それを理由に艦長は地球への帰還を志すが、AUTOはそれを許諾しない。

艦長「事態は変わった!帰るぞ!(Auto, things have changed! We've got to go back!)」

AUTO「艦長、命令は"地球へ帰るな"です。(Sir, orders are: "Do not return to Earth".)」

艦長「今は住めるんだ。これを見ろ、青々と育ってる!彼は間違ってるぞ!(But life is sustainable now! Look at this plant, green and growing! It's living proof he was wrong.)」

AUTO「無関係です(Irrelevant, Captain.)」

艦長「大いに関係ある!あそこにあるのは我々の故郷。故郷が大変な時にじっとしていられるか。今までなにもしなかった。(What?! It's completely relevant! Out there is our home! Home, Auto! And it's in trouble! I can't just sit here and...and...do nothing! That's all I've done! That's all anyone on this blasted ship has ever done... NOTHING !!)」

AUTO「ここだと生き残れます(On the Axiom you will survive.)

艦長「生き残るよりも生きたい!( I DON'T WANT TO SURVIVE! I WANT TO LIVE!)

AUTO「命令に従ってください(Must follow my directive.)」

艦長「ああもう!......私はAxiomの艦長だぞ。我々は本日より故郷へ向かう(I'm the Captain of the Axiom. We are going home today!)」

 Axiomでは植物の存在そのものが地球帰還プログラムの発動スイッチとなっているため、ここから地球に帰還させたくないAUTOたちとの間で苗の争奪戦が始まる。AUTOは真実を知った艦長を監禁し、EVEとWALL-Eを廃棄しようとする。人間は地球で生きていくために、EVEは破壊されたWALL-Eを修理するために、それぞれが地球へ向かおうと、何がなんでも苗を取り戻そうとする。

 すったもんだの末に地球帰還プログラムが起動。AUTOに幾度も妨害されるものの、艦長は自らの足で歩くことを選択し、ついにAUTOの自動操縦(auto pilot)モードを手動でオフにしてマニュアル操縦モードに変更する。

艦長「AUTO, you are relieved of duty!

AUTO「NOOOOOO!!!」

 無事に苗をセットし地球帰還プログラムが始動、ハイパージャンプで地球へとひとっ飛びに帰還する。

そして地上へ

 地球へ帰還したAxiomから自らの足で降り立つ人々。EVEは大急ぎで壊れたWALL-Eの修理に向かう。WALL-Eの犠牲に敬意を表す人々。

 EVEの献身により無事WALL-Eはもとに戻り、Axiomから降りた人々は艦長の指揮のもと、「栽培」を始め、地球での生活を開始する。その頃地球はWALL-Eの掃除の甲斐もあってか、地表に土が現れ、少しずつ植物が生い茂りつつあるのだった。(終わり)