化粧関連 自己分析メモ

(注意:完全に個人用の記事です)

 復職してメイクをしなきゃいけなくなった未来の私が考えなくてもいいように、育休中の私が考えたり調べたりした内容についてまとめたメモです。

1. 自己分析

自己診断になりますが......たぶん......

  • 確実に乾燥肌
  • パーソナルカラー:クールウィンター
  • 骨格タイプ:ナチュラル(手の甲、尺骨茎状突起、鎖骨などから推定)
  • 輪郭:ベース顔(下記参照)
  • 顔タイプ:クール(眼鏡着用時?)orクールカジュアル(裸眼時?)
  • →大人顔のようです。クール寄りのソフトエレガントの可能性がでてきました。その上で目指したい方向はクール。
  • 頬骨が出ていて、頬の下に影ができやすい。
  • 目の下の頬の三角領域が痩せていて平面的。膨らみがない。

肌について

2024年10月30日に資生堂のコスメカウンターで測定。

乾燥肌、肌年齢35歳。顔の色は明るめニュートラル。

パーソナルカラーについて

多分だけど、クールウィンターかクールサマーの可能性あり。今までに人から着ているときに褒められたり、顔色が良くなった色が集まっているのがだいたいこの辺のグループ。

www.reinette-color.com

ご自身を黄み肌のブルーベースと感じやすい傾向を挙げると、
1、苦手なイエローベースのコスメや髪色で肌が黄くすみしている
2、肌色が暗い=肌が黄色いと誤解されている
3、しっかりとした肌質で、血色がわかりにくい

この3つのパターンが多いです。

1のタイプの方は16タイプパーソナルカラーで言うと、クールウィンターさんに多いですね。
極端に黄みが苦手で、イエベカラーを身につけるといっきにくすんでしまう方。
一般的な人気色は、クールタイプさんには大体黄み強い為、メイクで黄くすみした状態が当たり前になっているケースですね。
このタイプの方は、クールウィンターさん向けのコスメでご自身の肌色認識が一瞬で変わりますよ!

この1のタイプの例、完全に20代前半頃の私の悩みそのまんまです。

これを見てもやはりクールウィンターの可能性が濃厚かも......?

 

www.blubel.jp

これ↓見ると明らかにブルベ冬になりました。

www.youtube.com

 

顔タイプについて

 眼鏡をかけたことでデルブーフ錯視により目が大きく見えて、クールカジュアルからクールにタイプが変化している可能性が考慮される。

→そもそも目がそこまで小さいわけではないようす。(間隔は広いけど)。

 顔のパーツは小さめなのでソフトエレガントなのかもしれない?

note.com

 この方とおそらく顔タイプが近く、その上で目指したい方向がクール寄りなので、無理なく寄せやすいのかもしれない。

 

顔の輪郭について

note.com

 こちらを参照する限りでは、おそらく顔タイプは「四角顔」ではなく「ベース顔」の可能性あり。

 

2. フェイスパウダーの扱い

 サラツヤとか内側からの輝きとかテカリ防止とか色々あるけれど、当面は防御力重視で行きましょう。花粉防御もできるIHADA フェイスパウダーがよさげ。肌色なので塗り直しのときも便利でカバー力もあります。

 必ずしも全顔にまぶす必要はなさそうです。IHADAのフェイスパウダーは比較的マット仕上がりになるので、テカりやすい部分に部分使いすると良さそう。

www.kenei-pharm.com

肌全体にフェイスパウダーをのせるのではなく、油分が気になるところやテカりやすいところなどに部分的に使い、乾燥している箇所は避けると良いでしょう。

鼻周りやおでこなどを含むティーゾーンはテカりやすいのでフェイスパウダーを使うと良いですが、ティーゾーンが乾燥しやすい方は、肌の状態を確認してからのせるかどうか判断しましょう。

 

 他にも、

  • アイシャドウを指塗りする前に指にフェイスパウダーをとる→アイシャドウが指の皮脂で固まるのを防ぐ
  • アイシャドウを筆塗りする前に筆にフェイスパウダーをとる→筆にアイシャドウがつきすぎるのを防ぐ
  • 鼻かんだときの化粧直しにフェイスパウダーをはたく
  • 眉を書く前にティッシュで脂を拭き取ったあとに毛の根元にフェイスパウダーを仕込む

などの利用方法ができます。携帯しやすいのでフェイスパウダーと口紅は持ち歩いてもいいかもしれない。

※アイシャドウパレットに皮脂がつくとアイシャドウが固まってしまう&酸化してしまうため、長持ちさせるためにはパレットに皮脂をつけないように扱うことが重要。

 

3. ベースメイク、ファンデーションの扱い

化粧下地

 ETVOSのミネラルインナートリートメントベースを使用中。色はポーセリンベージュ。長時間のメイクに耐える構成になっているそう。

etvos.com

適量(2~3プッシュ)をスキンケア後にムラなくのばします。足りない場合は少量ずつ付け足してください。

→メイクのときは2プッシュ使う。(1プッシュにケチったらかなり保湿効果が落ちました)

ファンデーション

 現状、スキンケアしつつ塗りやすくBBクリームくらいの薄付きということで候補になっているのが、SHISEIDOのエッセンススキングロウファンデーション。

→10/30 140番購入しました(プレゼントしていただきました)

www.shiseido.co.jp

 ツヤがかなり出るので、頬骨が出ているところはツヤによってハイライトがつよく当たりがち。頬骨から頬にかけてのコントラストが激しい部分(目尻の下など)についてはフェイスパウダーをまぶしてややセミマットに寄せることでソフトフォーカスにすることができる。

 下地不要らしいがまだ実験していない。ワンマイルメイクではBBのように使えるか実験が必要。

→かなり楽。あとメイク落としたあとの肌のもちもち感があるのは下地なしの場合。

 

 指塗りでのファンデーションの塗り方については、こちらの動画を参照

(ある程度練習したので体に染み付いてはいると思うけど)

youtu.be

ファンデーションは均一に塗らない

→均一に日焼け防止をしたかったら日焼け止めをしっかりベースに塗ること!

 

BBクリームは?

今まで使っていたのがこれ。明るい方。

www.shiseido.co.jp

 でもエッセンススキングロウファンデーションに慣れると、これが顔ものすごく乾燥して疲れてしまうことに気づいてしまった!もうだめだ!戻れない!

 これ使うくらいならエッセンススキングロウファンデーションを下地なしで塗ってBBクリーム扱いしたほうがマシ!

カバー力について

 あまりカバー力のあるものを選ぶと厚ぼったい仕上がりになるので、薄付きを目指したい。カバー力が少ないものはシミなどは隠れにくいが、細かい粒のシミであれば、眼鏡である程度ごまかすことができる。眼鏡のテンプルの色が濃かったり、テンプルの影が頬骨におちたりすることで、頬骨のシミを目立たせなくすることが可能。眼鏡の選び方次第では、あまり熱心にカバーをしなくてもいい場合がある。

 

4. アイメイクについて

 明るめのファンデーションを使うとアイシャドウの発色も良くなるので注意。発色を抑える場合はフェイスパウダーを活用する。塗りすぎちゃったときもフェイスパウダーをうまく使って。

 セットになっているパレットの中の色に拘りすぎずに、異なるパレットを横断するように色を選んで使ってみるのも大事。パレットの色ごとの特性を覚えておくとよい。

塗る範囲について

 上まぶたは眼窩を意識して塗ると、変に広く塗りすぎずに済む。ベースカラーを塗るときはブレンディングブラシでぼかすことを忘れずに。

 年齢を重ねて眼窩がさらにくぼんできたら、ハイライトなどを活用してくぼみを強調しないように気をつける。

 

 マットなブラウンでスモーキーアイを作ると、かなり落ちくぼんで疲れた怖い印象の顔になるので、よほどハロウィンとかでなければ避けたほうが吉。特にスモーキーな色を眼窩くらい広い範囲で塗るとやばい。

 マットなグラデは赤か紫でトライする程度におさめたほうがいいかも。

 

 鍵は紫〜赤紫かもしれない。この辺の色だと外さない。あとは塗り方をマスターする(筆or指塗り)。

アイシャドウのメーカーごとの違い

Dior(頂き物)

  • 筆塗りが向いている。伸びがよい。
  • 発色がものすごく良く、薄めてもしっかり色づく。グラデーションがきれいに出る。
  • サンククルール ソフトカシミアよりも、サンククルール ルージュトラファルガーのほうが合っている気がする。(ルージュトラファルガーは人生コスメかもしれない)
  • ルージュトラファルガーの真ん中の赤はライン使いまでにしておくこと。広範囲に塗ると京劇メイクになるので危ない。
  • ソフトカシミアの真ん中ブラウンは結構マットに近いサテンで薄付き。マットなベースカラーが欲しいときに使うとよし。
  • ソフトカシミアだけで塗ると疲れ目に見えやすい可能性があるので、ベースカラーに赤みをつかうとちょうどいいかもしれない。

www.dior.com

SUQQU(頂き物)

  • 指でのスタンプ塗りが向いている。ステンシルだと思って扱う。
  • あまり伸びず、筆塗りだと途中で粘ってしまう。
  • 普段遣いとして使っていく。あまり濃い色を塗りたくない場合は、指にフェイスパウダーをとって薄めながら使う。
  • 宵紫のパレットの右上シルバーはラメよりもハイライトに向いている。ポイントで置いて使ってみるとよし。
  • 紅咲のパレットの左上ゴールドは点置きでわずかに輝かせるとよい。紫の上にのせると夕日のように輝く。後述するように、光に関しては黄色に寄せた色を乗せても、影色が青系統であれば違和感が少ない可能性がある。

塗り方

 目のサイズや位置的に、縦割り三分割グラデーションが向いている。この塗り方には離れ目解消効果あり。目を丸く見せる効果もある。目頭にもシャドウを塗る根拠は以下を参照。

raxy.rakuten.co.jp

離れ目解消メイクは、なるべく顔の中心を強調させるのがポイント。アイメイクも目頭部分を強調させることで、離れ目がカモフラージュされやすくなります。アイシャドウは目頭部分に濃い色をのせ、目尻に向かって淡いカラーでグラデーションを作っていきましょう。

濃い色といっても、ダークすぎるとかえって目元を小さく見せてしまうことがあるので要注意。

一番濃いカラーではなく中間色を使うと、奥二重さんなどの二重幅が狭い方でも自然に目元を大きく見せ、目頭部分を強調できます。

※カットクリースのような鼻側にハイライトを置く+目尻にがっつりシャドウを置く塗り方をすると、さらに離れ目が強調されてしまうので注意。

 

 もしくは、淡い色で横割りグラデをして、眼球の真ん中にハイライトであとから縦割り三分割を作るのもアリ。ブレンディングブラシでしっかりぼかすこと。

 

筆の扱い方についてはこちらの動画を参照

youtu.be

 

下瞼・涙袋・目尻・目頭

 涙袋はペンシルコンシーラーで書いてもOK。意外としっかり書いても目立たない。涙袋の影については自分の場合は黒ずんでしまうのであえて書かなくてもOK(もともと持っている下瞼のくすみが影になってくれている様子がある)。

 下瞼の三角ゾーンは黒茶色系の締め色を乗せると目のフレーム感が強まって小さく見える。塗る場合は赤・ピンク・紫系統の影色をわずかに乗せること。

 三角ゾーンよりも目頭側には色は乗せない。指塗り厳禁(色の範囲が広くなりすぎるため)。赤紫系で下瞼の広い範囲を塗ってしまうと、上下のまぶたが赤く炎症を起こしたような印象になる。

 

目尻にくの字には入れない。

www.shiseido.co.jp

下まぶたには、黒目の中央辺りから目尻まで、上まぶたと同じアイシャドウをON。目尻部分は上下のアイシャドウで囲まず、開けるのがポイントです。目尻を「くの字」で囲むと、フレームが強調されて目が小さく見えてしまうためNG!

 

 目尻のくすみをペンシルコンシーラーで飛ばすことで、目尻における色のコントラストを上げてアイラインを引き立てることができる。もともとあるくの字型の目尻のくすみを断ち切るイメージ。アイラインは上まつげに連なるように引く。目尻のくすみと一体化しないように、少し上を狙って引く。

michill.jp

目尻にメイクをする時は、アイシャドウでぐるっと囲まずに、あえて隙間を作り、その部分に少し明るめのコンシーラーをのせます。

そんなことしたら目が小さく見えそう…なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、逆なんです!

この部分を明るくすることで白目が横に広がってむしろ目が大きく見えますし、今っぽい抜け感も出ます。

 

 アイラインは目尻のコンシーラーより上のラインで引く。下げすぎず上げすぎない。引っ張るのではなくぽんぽんとゆっくり置きながら位置を調整すると失敗しにくい。とにかく急がないのがポイント。ライナーよりもシャドウで置いたほうが失敗しにくい。

 

目頭切開ラインは目がすごく痒くなるので塗るのは無理をしないこと。

目頭ハイライト程度はやってもOK。目頭ハイライトは大粒のラメよりも、パールに近いものやハイライターなどが向いている。

マスカラ

 抜け感カラーとか、黒は抜け感がないとか言われているけれど、ブルベ冬(仮定)で使えるカラーマスカラはなかなか見つからないので、無理して買わないこと。とりあえず黒でやっていきましょう。紺色がプチプラで見つかったら挑戦する甲斐はあるかも。

 バッチリ伸ばすよりも小回りがきく小さいマスカラのほうが使いやすいかもしれない。

maison.kose.co.jp

 

5. 他、ポイントメイク

リップ

 真ん中1/3に塗って両脇はぼかして塗る、というのがポイントかも。とにかく重み付け、グラデーション、立体感がキーワード。

リプモン13:ほぼヌーディー。塗ったかどうかわからない色

リプモン17:ピンク系の発色。化粧っ気あり

リプモン12:赤色に見える。かなり化粧っ気あり。ただし風呂上がりの唇と比べるとほぼ変わらない色。

リプモン13→ティッシュオフ→唇の真ん中だけリプモン12をぼかして塗る、と立体的になる、かも?

※濃い色のリップをベタ塗りすると平面的でものすごく古い顔になります。唇にも立体感を意識しましょう。

 

 コスメカウンターで塗ってもらったクレドのブリアンアレーブルエクラの03チャームはすごく唇によく馴染んでいた。派手すぎず、でもくすみとシワは飛ばしてくれる。ナチュラルメイク風のしあがり。ラメは下真ん中1/3だけに乗せて立体感を。

www.cledepeau-beaute.com

コンシーラー

 目の下のクマ、これ黒く見えてるけど青クマかも。青み吸収されてグレーに見えているだけかも?!

kotaro-clinic.com

 フェイスパウダーの前に塗る!!!(毎回忘れる)

 気になっている商品は、ザセムのカバーパーフェクション チップコンシーラーの0.5と1.25と、 ブライトナー(ピンク色のやつ)。黄色みが少ないのはこの3つ。あんまり黄色いやつだと肌から浮くかもしれない。

【ポスト投函】\送料無料/カバーパーフェクション チップコンシーラー※ゆうパケット発送※thesaemcosmetic.jp

→ザセムは乾燥しやすいので、もっと潤うやつがよさそう。ピンク系で。

www.fashion-press.net

カネボウ カネボウ デザイニングカラーリクイドのピンクのほうがいいかも。百貨店でテストしてもらうこと。1月発売。

 

コンシーラーを使ったハイライトの入れ方も習熟が必要。

www.shiseido.co.jp

とはいえTIRTIRのハイカバーなファンデーションを部分使いするだけでもコンシーラーくらい隠れる感じはある。

→練習にはいいけどやっぱりちゃんとカバーしたほうがいい

ハイライト

raxy.rakuten.co.jp

ハイライトは、顔の低い部分に入れることで高さを出し、立体感のある顔立ちに見せるアイテムです。出てる頬骨を引っ込めるために、目尻の外側にあるCゾーンからこめかみにかけてハイライトを入れましょう。

頬骨が目立つ方は、こめかみの周辺部分が頬骨よりも低くなっている場合が多いです。目尻の周りを「C」の形で囲むようにハイライトを入れれば、この部分に高さがあるように見え、頬骨が目立ちにくくなります。

 ハイライトは、いずれ加齢に伴い頭蓋骨のシルエットが出てくるタイミングでも必要になってくるので、時々使って習熟しておくほうが良さそう。

 20代の若くて肌にハリがある人と、40代以降ではハイライトを入れるべき場所が異なってくるので、参照するソースに注意。

www.goo.ne.jp

 現時点ですでに、目の下の頬の部分が痩せて平たくなっているので、この部分の光沢感は欲しいかもしれない。

www.biteki.com

 

 セザンヌのパールグロウニュアンサー ライラックムード買った

→大きい筆でぽんぽんと置くようにすると不自然さなく塗れる。青光りするので注意。他のチークの色とこれの色がずれるので、色味調整しながら使ってください。

 

チーク

 明るい色のファンデーションを使うと発色が良くなるので、要注意。かなり薄付きを目指して乗せること。あと筆を強く押し付けると毛の奥に入り込んだチークが出てきて濃くなるので、柔らかく乗せることを心がける。特に右手で右頬を塗ると力が入りすぎるので注意。

 

チークを使った陰影の作り方についてはこちらの記事が詳しい。

argylemake.com

「チークは赤色の影」という前提で扱うと吉(上記記事参照)

頬骨が横に張り出している方は、張り出した部分の頬骨を横方向に切るように影を入れ、かつその部分から頬下の段差に向かってグラデーションをつくるのがポイントです。

③黒目の下と小鼻の横の交差点から、耳の穴くらいの方向へ2~3回引っ張る(頬骨の角度につられず、頬骨を横に跨ぐようなイメージで。)

④③で引いたライン上から(段差のある範囲だけ)段差に向かって縦方向にぼかす。(色はとりなおさない)

大切なのは、「頬骨でできる陰影のコントラストをまたぐようにチーク(影)を入れることで、コントラストをぼかす」ことかも。

 

 顔のタイプも含めて、あまり前側にチークを丸くいれると合わない。

 大小の頬骨筋の収縮部位(笑顔になったときに膨らむ部分)にチークを足すと、頬骨の張りやエッヂのシャープ具合とバランスがとれずアンバランスな印象に。

※ブルベ冬はチーク不要という流派もあるらしい。

 ファンデーションが140番と赤みがあるため、顔の血色が変化している。もとからある頬の赤みをうまく活かして(=かぶらないように塗って)。

 

 コスメカウンターでは手持ちと同じSHISEIDOの04 Aura Pinkをうすーくつけてもらった。やっぱりこの色でいいらしい。

brand.shiseido.co.jp

 

 自眉が濃いので、フェザーブロウが向いている。ただ「生えっぱなしの眉」とフェザーブロウは違う。キーワードは立体感。平面的(書いた眉、脂っぽくて張り付いた眉)ではないことが大事。型にはめた眉ではなく、己のもつ自眉のシルエットと存在感を活かして眉を使う。

veryweb.jp

 脂をティッシュで拭き取り、フェイスパウダーをブラシで眉の根本にまぶしておく。毛を逆立てて立体感を出したあと、毛流れを整える。余裕があればブロウリフトで眉を立ち上げ、キープする。

www.kose.co.jp

 メインから離れた部分のぱらついた眉は剃り落としてOK。メインの眉に近い部分のうち、産毛は残して抜け感として扱う。シルエットが気になるならコンシーラーで隠す。いつでもシルエットは調整できるようにコンシーラーをうまく使う。

www.kose.co.jp

ドンキ限定のホワイトベージュがいいかもしれない?

 

 抜け感については、ブルベ冬なので諦めろ。どうせ黒髪黒眉が一番しっくりくる。極細黒眉ペンシルで色ムラを均一にして、抜け感は周囲の産毛で出す。無理して眉マスカラを買わないこと(買うとしても青みのある紺色紫系だけにする)。

 

6. 色選びの注意点

単体で見たときの色と、色相対比で見たときの色

自分の顔の一部だけに着目するのではなく、顔全体における色の対比を含めた見え方を考慮したほうがよいです。

mymemoblog.hatenadiary.com

イメージと実際の違い

 色の名前から想起される色のイメージが間違っている場合があります。

 いずれもワインに関連する名前の色ですが、ぶどうのような青紫のニュアンスはなく、赤から茶色がかった色です。

 青紫に関連する色を選びたい場合、キーワードとしては「ラズベリー」「フランボワーズ」「プラム」などの名前が使われているコスメを買うようにするとよいです。バーガンディの名前に釣られないように注意。(ボルドーとバーガンディ系はもう買うな!

encycolorpedia.jp

光と影の話

 下記を参照する限り、ハイライトは黄色寄り、シャドウは青寄りでも不自然さがあまりないのかもしれない。

(実際、シャドウが紫寄りで、ハイライトがゴールド寄りでも調和する場合がある)

webnaut.jp

2 なじみの原理

自然界にみられる色の変化や、見慣れている配色は調和する
(ルード、ベゾルト、ブリュッケなどの理論に基づく原理)

自然界でよく見られる色の組み合わせや、太陽光の影響を取り入れた配色は調和しやすいとされています。例えば、自然界では太陽光に照らされると、日向の部分は黄みを帯び、日陰の部分は青みを帯びて見えます。この現象を「色相の自然連鎖」といい、それを利用した配色方法「ナチュラルハーモニー」はとても馴染みやすい配色となります。
この原理を使うと、色が馴染み易く自然に見える為、メイクや長時間過ごす部屋の配色に効果的だと言われています。

7. あとで書く

 

8. 花粉症の時期について

 1月から抗ヒスタミン剤の内服をしておくこと。アラミストの点鼻も併用すること。シダキュアの内服を忘れないこと。

 だいたい長めに見積もって、2月から6月までは化粧ができない(できなくてもしょうがない)と思った方が良い。

 花粉症の時期の症状がどうしても重くて目の粘膜や鼻の粘膜に炎症が起きている場合は、無理して化粧をしない。日焼け止めを塗っていれば合格。

 そもそも花粉症は疾患で、その時の目や鼻は炎症を起こしている患部です。骨折をしたら患部に体重をかけないように、炎症を起こしているならそこに負担がかかるメイクをする必要はありません。肌荒れ自体も起きやすいので、とにかくケアを重点的に。

鼻の症状とメイクの両立

 それでも、鼻水が出る時期にメイクをしたい場合は、フェイスパウダーを活用してください。IHADAのフェイスパウダーを外出用に買い足して、ケースに小さめのブラシ(CANMAKEやセザンヌについてくるようなものでOK)を入れておき、それで鼻周りにまぶせばだいたい大丈夫です。これとリップだけ持ち歩くならかさばりません。

 

9. 眼鏡の選び方

 いろいろメイクについて記述したが、私の場合は結局最後に眼鏡をかけるため、眼鏡もメイクの重要なパーツとなる。眼鏡の形状次第では、アイメイクよりも絶大なデカ目効果が得られる。(レンズの歪み効果によるものではない)

 リムレスを使うかどうかについては子育ての段階を見て調整してください。

眼鏡の形状とデカ目効果

www.zoff.co.jp

 

 眼鏡のフォルムについては、自分の顔のシャープさを引き立てたいか和らげたいかで選択肢が異なる。私の場合はスクエアのほうが目的に合っている気がする。

weekly.jins.com

一方、四角顔の直線的な印象が気になるなら、直線的なフレームは避けた方が無難。具体的には「スクエア」や「ウエリントン」です。ですが、キリッと端正な雰囲気を引き立たせたいなら、あえてこういったフレームを選ぶのも手。四角顔ならではの個性が生き、モダンでスマートな印象に決まります。

 

 ウェリントンなどの縦方向に長い眼鏡を進めてくるサイトもあるが、これは輪郭のみに注目している場合が多く、目の小ささや離れ具合については考慮されていない。目の小ささをカバーしたい場合は、縦方向が短い眼鏡のほうが有効。

www.zoff.co.jp

目を囲う空間が狭く、レンズが小さいフレームのほうが目を大きく見せられます。

 

www.arbor-opt.com

また上記記事のように、 眼鏡のブリッジには離れ目を緩和する効果がある。

アイメイクで求心顔に寄せるのが難しい場合は、眼鏡のデザインを用いる方法もある。

 

 顔タイプや骨格診断などから、直線的なシルエットを得意としている可能性があるため、装飾のある眼鏡を購入する場合も、曲線的ではなく直線的なデザインを選ぶとよいかもしれない。

(ただし、女性用では女性的なデザインのものが多いため、必然的に曲線デザインが多くなってしまいがちな状況はあると思われる)

(あと『中顔面短縮』がいまの女性メイクのキーワードとして重要なため、中顔面=頬の空間に線が入るような縦方向の長い眼鏡が多く出回っている様子がある)

→試着してみたところ、少し角張ったオーバルまでなら行ける。ソフトエレガントの要素があると横長のオーバルがちょうどいいらしい。

www.lemon8-app.com

 

眼鏡で輪郭・シミをカバー

 眼鏡が頬骨によるシャープな輪郭を緩和している可能性がある。眼鏡をかけると顔の中で眼鏡が一番前に飛び出て、頬骨よりも目立つ。また、頬骨自体に眼鏡の影が落ちる。これにより、顔の中で頬骨にハイライトが当たり目立ってしまうのを、眼鏡をかけることで防ぐことができる。

 頬骨が飛び出ているのが眼鏡により目立たなくなるだけで、顔の印象はだいぶ柔らかくなる。

 眼鏡でシミ隠しについてはファンデーションについての段を参照。

 

眼鏡でアイメイク効果

これは仮説だが、おそらく眼鏡により以下のような効果が期待できる。

 目のくぼみやシワ、くまなどがひどくなってきた場合は、目の周りに色が違う部分が増えることで眼鏡が逆効果になる可能性もあるので要注意。(眼鏡周囲が色でうるさくなる)

 

あとで買う眼鏡

 眼鏡を買うときのキーワードは

「スクエア寄りのオーバル」「紫」「天地33mm」※36mmは大きすぎ!

 

 下記は試着してみてすごく良かった。オーバルとスクエアの間っぽい感じ。目尻側も上がりすぎずツリ目を強調しないデザイン。色も派手すぎずちょうどいい。

www.meganeichiba.jp

 子どもが眼鏡を吹き飛ばさなくなったら購入を検討してほしい(2027年頃)。

 余裕があれば先に購入して取り置きしておくのもアリ、というくらいしっくりきていた。アイシャドウなしでかけたときに化粧の代わりになってくれるだろうか......。

 

 何社かメガネメーカーを見比べたが、いちばんエレガントな商品が多いのは眼鏡市場のよう。フレーム幅が広めで、顔の幅が広くてもかけやすいデザインが多い。カジュアルすぎる他メーカーには合うのが少なかった。

 

10. 下限値のメイクについて

 忙しい時、精神的に療養が必要なとき、余裕がないときは、日焼け止めを塗って眉毛を整えるだけでも十分です。身体・精神ともに防御に入ってください。

 眼鏡がアイメイクをなんとかしてくれます。あとはマスクしてください。

 

11. なんでメイクをするのか

 「きれいにになる」「かわいくなる」「モテる」などの目的を目指す必要はありません。

 「社会に適応する」ために無理に化粧する必要もありません。正直、やろうと思えばすっぴんで勤務することもできます。メイクというのは泣きながらやることのほどでもないですし、必ずフェミニンなスタイルをしなきゃいけないわけでもありません。

 自分の顔を、加齢で変化していく顔立ちを、自分で操縦して乗りこなすための技術を習得してください。自分の顔のもつ特性を理解して、伸ばしたりカバーしたりして使いこなしましょう。軽い負荷で、防御や回復もしながら、最低限「整える」というラインを目指して動きましょう。

 

12. 服装など

 ある程度厚みがあってハリがあってシルエットが直線的で白黒っぽい上着があるとよし。ちょっとお値段が張っても一枚持っておくと今後使いやすいと思う。

 ただし花粉が落としにくい素材は避けたほうがよい。

 ハリのある黒のトレンチコートとか欲しい......。

『青み吸収』は色相対比?【化粧考察】

 化粧をしていると、パレットで見たときの色と実際に顔に塗ったときの色が違って見えたりしますよね。そういう現象について、『青み吸収』といった言葉がよく使われていますが、それが実際には何が起きているのか、どうして起きるのかについて考察しました。

 

[注意]

私自身は色彩について専門的に学んだわけではありません。ネット上の知識をかいつまんで読んだうえで機序を想像してこちらの記事を書いています。専門的に詳しい方がいればコメントお願いします。

 

[筆者プロフィール]

これまでにパーソナルカラーの診断は受けたことなし。

周囲からのコメントと自己診断では、ブルベ冬の疑いあり。

 

1. 『青み吸収』とは?

i-voce.jp

上記サイトによると、

青みを帯びたコスメが肌の上で見たままに発色しないこと。「青み」のみが吸収されるため、青みピンクがコーラルピンクに転んだり、青みを帯びたボルドーがブラウン系に発色したりする。

と説明されています。

また、青み吸収が起きやすい人の特徴として、

と説明されていますね。

 

 私自身も青み吸収は経験があり、そのため色を選ぶときは「青みが消える前提で乗せたい色を選ぶ」という対策を取っています。

2. 色相対比って何?

chot.design

色相対比は、周りの色の影響を受けて色相がずれて見える現象です。
色相の異なる色を同時に見ると、周りの色の補色に近づいて見えます。

と、上記ページでは説明されています。

わかりやすい例は、以下のような感じ。

中央のオレンジ色は同じ

※注意

「背景色の補色に色が似てくる」わけではなく、「補色の方向に色がズレて見える」ことに注意。左側を例にすると、補色の緑色に寄って見えるわけではなく、並び順で補色により近い黄色に寄って見えています。

 

 私は、この現象が肌の上でも起きることで、『青み吸収』が発生しているのではないか?と考えました。

3. 肌の上での色相対比

 肌の色といえば、イエローベース(イエベ)とブルーベース(ブルベ)に分けて考えるパーソナルカラーが有名ですよね。

 そこで、少々極端ではありますが、肌色の下に青色と黄色を置くことにより、イエベとブルベの皮膚の色を下図のように模式的に図で表して考えてみました。

イエベ、ブルベの肌の模式図(極端な例)

青みピンクの場合

 こうした肌の色があると考えた場合、メイクをするとこの上にメイクの色が乗るわけです。例えば、明るい青みピンクを乗せると、このようになります。

肌の上に青みピンクを乗せた場合

 一番上にある白背景の状態は、「コスメのパレット上で発色を見た場合」となります。そこと比較したときに、青い左側と黄色い右側において、どちらがより「青み」を感じやすいか、について画面上で比較してみてください。

  • 右側の黄色のほうが、元の色に近いか、もしくはより強い青みを感じませんか?
  • 左側の青のほうでは、元よりも青色の発色が弱く感じませんか?

 これを、先程の色相対比の考え方で分析してみます。色相対比では、「周りの色の補色に近づいて見える」んでしたね。

左側では赤色に、右側で青色に寄って見える

 今回使用している色相環では、例で出したような「明るい青みピンク」と同じ色が含まれていませんが、同系統の色である「赤と紫の中間の色を薄くしたもの」である、ということをベースに考えます。

  • 左側の模式的ブルベでは、青みピンクが補色の赤色側に寄って見えていることになります。
  • 右側の模式的イエベでは、青みピンクが補色の青色側に寄って見えていることになります。

 この、「青みピンクが赤色に寄る」のが、おそらく『青み吸収』と呼ばれている現象なのではないでしょうか?

 また同時に、イエベにおいて「青みの発色が良い」と言われやすいのは、この色相対比によって「青色に寄って見える」ことが理由なのではないでしょうか?

 

 そのため、ブルベが『青み吸収』と言われるならば、イエベは『青み強化』とでも言えるような視覚効果が生まれているのではないかと考えます。

(似たような現象として語られる、『黄み吸収』と呼ばれる現象も、同様の理屈で説明できるのではないかと考えています)

 

4. 暗い色と彩度対比

 個人的な経験談になりますが、私自身が紫のアイシャドウを使用すると、遠巻きで見たときにブラウンに発色したように見えることがあります(この現象を『茶ころび』と呼ぶ場合があるようです)。この理屈についても考察してみました。

 ここで重要になる視覚効果が、「彩度対比」というものです。

chot.design

 こちらのページでは、彩度対比について、

周りの色が高彩度だと対象の色がくすんで見え、反対に周りの色が低彩度だと対象の色が鮮やかに見えます。

と説明されています。具体的には下図のようなものです。

彩度対比の例

PCCSトーンマップ

 ここで、PCCSトーンマップの図を引用します。図は下記サイトからダウンロードし、明度と彩度についての尺度を私が書き加えました。

12トーンの色相環セットイラスト - No: 24595741|無料イラスト・フリー素材なら「イラストAC」

PCCSトーンマップ

 『青み吸収』においては、色相対比が起きていたので、色相環の輪の中で色が移動したように見えていました。彩度対比では、背景色の彩度の違いによって、中心の色の彩度が変化(PCCSトーンマップでいう横方向の動き)したように見えました。

 

紫がブラウンに見える?

 この図をもとに、「塗った紫がブラウンに見える」ことを考えてみます。

 まず、ブルベの肌においては、色相対比によって『青み吸収』が起きることで紫が赤色に寄って見えると考えられます。

 次に、彩度対比で考えます。彩度対比では、「周りの色が高彩度だと対象の色がくすんで見え」るのでしたね。つまり、PCCSトーンマップで考えると、彩度が低く見える=左側に移動したように見えると考えられます。肌よりも彩度が低い紫色を塗った場合、肌が相対的に高彩度になることから、これと同じことが起きると考えられます。

 

 この2つを総合して考えると、PCCSトーンマップ上では下記のように色が移動して見えるのではないしょうか。

紫がブラウンに見えてしまう機序の考察

  点線の丸枠内を御覧ください。ブラウンに近い色味をしていませんか?これがおそらく「紫がブラウンに見える」ことの機序なのではと考えています。

5. まとめ

 『青み吸収』や『茶ころび』といったメイクの現象については、色相対比や彩度対比で説明できるのではないか?という仮説でした。

 とはいえコスメの発色についてはこれだけで全てが説明できるわけではなく、このほかにもコスメ自体の薄付き具合や、肌の色がコスメの下から透けてみえることも効果として考慮すべきと考えます。

コスメを買うときの注意点

 以上より、コスメは「肌の上の発色」だけではなく、「肌という背景の中でコスメの色が対比により変化して見える」ことも考慮して購入するとよいのかもしれません。

 他にも、自分自身の顔の中で見えている唇の色も、実際の唇の色と、背景である肌の色に囲まれていることで生じる対比により見えている色があり、その2つがズレている可能性も考慮したほうがよいでしょう。

 また背景色によってこの対比効果は変化するため、背景色自体を変える(ファンデーションやカラーコントロールを仕込む)ことに効果があるのもこのためでしょう。

 

 上記についても念頭に置いたうえでコスメを購入するとよいのかもしれません。

 この記事が皆さんの楽しいメイクアップの一助になれましたら幸いです。

映画大好き2歳児の話

 我が家には2020年生まれの子供がいます。この子はこの記事を書いている時点で2歳6ヶ月です。とても映画が好きで、2時間集中して見続けていることもあります。

 この記事は、そんなうちの2歳児についての記録を残すためのものです。エピソードが追加され次第追記します。

1. お気に入り作品リスト

 2022年9月27日現在での、うちの子が見たことのある映画の好感度について、下記リストにまとめてみました。

用語解説

A: カタログ収載済み

 我が家では、言葉の拙い2歳児でも好きな映画を指定できるようにと、上映映画を手作りのカタログから選ぶ方式にしています。映画のポスターや作中の場面を印刷したものをファイルにして、どんな作品か、どんなキャラクターが出てくるかを視覚的に識別できるようにしています。

 ○: そのカタログに収録している作品。指差しで指定できるもの。

 ー: まだカタログに含められていない映画。子供が言葉等で指定した場合に上映する。

B: 何度も見る作品

 一度子供に見せた後、繰り返し繰り返し見たがるようになった作品です。

◎: 再生の要求頻度が高い作品。一日に何周も、連日見ることもある

○: 時折見たがる作品

△: 自分から指定して見たがるときもあるが、飽きている時間が長い

ー: 「これが見たい」と自ら指定してくることがない

 

全: 全編を通しで見続けるほど集中して見ている作品

部: 好きな部分だけを繰り返し見たがる作品。他のシーンは遊びながら暇つぶしをして、好きなシーンが来るのを待っている。

 

C: 親のお気に入り

 親が気に入っている作品。子供の「好き」と、程度が重なっている作品も少なくないですが、親が好きでも子供が全然見たがらない作品も少なくありません(特に初期のディズニーアニメ等)。

 

2. 子どもの発達具合

 2歳半時点での子供の発達具合と、それが映画鑑賞中にどのように表れるかについて列挙します。

(1)認識

  • 自分のわかるもの、知っているものが作中に出てくると指差しで教えてくれる(カラスがいた、セミが鳴いている、魚が泳いでいる、等)
  • 動作を真似する(キャラクターの動きの真似、ぬいぐるみやおもちゃなどを使ったシーンの再現など)
  • 感情の言語化:物言わぬキャラクター(動物やロボットなど)が感じている感情を推測し、それを言語化する(「こわい」「待って」「どこかな〜?」等)
  • 同じ食べ物を食べたがる(ハム、りんご等)
  • 台詞の暗唱:全てを真似することはできないが、キャラクターと同じタイミングで同じセリフの音を発することがある(暗記していないと重ねることはできないタイミングで話す)

(2)表現

  • 言葉の理解度、名詞の認識している数の多さはある程度保たれている様子があるが、発音にやや稚拙さを抱えている。
  • 発することができる音の組み合わせと速度に限界があり、流暢に話すことができない。
  • ジェスチャーや歌(メロディ)、ぬいぐるみやおもちゃ、指差しなどにより、自分が認識している内容をアピールしてくる。
  • 目の前で指し示せるモノが存在していると、それを名詞の代わりとして使用し、自分が伝えたい内容を伝えることができる。
発音の稚拙さの例
  • パンダ→「ぱん」
  • トトロ→「とと」
  • ルパン→「んぱん」
  • テト→「ぇと」
  • ウォーリー→「ぉーぃー」
  • ポニョ→「ぉぬょ」
  • リサ→「ぃしゃ」
  • カーチス→「あーちしゅ」
  • R2-D2→「あーちゅー」
  • BB-8→「びーびー」
  • Highway to the danger zone→「あーべー んーじゃー んじょーん」
  • 「やーいおまえんち、おっばけやーしきー」→「きー」
  • 「待ってー」→「あってー」
  • 「怖い」→「ぉわい」
  • 「あれー?」→「あぇー?」
  • 「飛行機は美しい夢だ」→「っこーぃ、っくぃー、んぇだ!」

(3)日常生活への反映

ぬいぐるみ・おもちゃ遊び

ジブリ宮崎駿系】

  • 子供-パンダのぬいぐるみ-ママの並びで手をつないで並び、足踏みをして「パンダコパンダ」のOP映像の真似
  • 逆立ちをして「パンダコパンダ」のミミコの真似
  • トトロのどんどこ踊り
  • 白い布を持ってぶんぶん振って、MAMMA AIUTOが降参するシーンの真似
  • 痛い思いをした時に、テトのぬいぐるみにペロペロ舐めてもらうと元気になる。
  • 紐がついたぬいぐるみをぐるぐる回してナウシカの真似
  • 肩や胸元にテトのぬいぐるみを置く
  • チコの実の代わりにアラザンを手に乗せて食べる。テトのぬいぐるみにも食べさせる。
  • メーヴェで飛んでるマネをしたくて親に持ち上げてもらう
  • ポニョのハムのシーンを見ながらハム(ビアソーセージ)を食べる
  • お花を差し出すマネをしてロボット兵のマネ
  • FIAT500のミニカーを持って壁を走らせながら、「カリオストロの城」の真似

トップガン

  • トップガン」「トップガンマーヴェリック」に出てくる、F-14、F-18、P-51、ダークスターを見分け/使い分けて遊んでいる
  • F-18でコブラ機動の真似
  • 飛行機のおもちゃを旋回させるときは 外周側をより高く飛ばす真似をして遊ぶ
  • F-18二台持ちで背面合わせの真似(なお尾翼を持ってしまうので同じ方向ではなく互い違いになりがち)
  • ビーチバレーのシーンでアイスマンのボール回しのマネ
  • パパお手製のマーヴェリック風フライトジャケットにサングラスをして自転車にまたがり遊び回る(マーヴェリックの飛行場でバイクに乗るシーンのマネ)

【洋画系】

お風呂でのごっこ遊び
音楽について
  • 車に乗るとまず最初にリクエストしてくる曲が「スターウォーズのテーマ」
  • 主題歌以外でも、サントラを聞くと作品名を言い当ててくる
  • 楽器でサントラのメロディを演奏すると作品名を言い当ててくる
  • サウンドトラックやイメージソング、テーマ曲でも一緒に歌える範囲で歌おうとする

【音楽を把握している作品と、曲名】

航空科学館での様子
  • 行きの新幹線よりも航空科学館の中のほうが興奮の仕方が数十倍やばい。
  • 5時間ずっと興奮しっぱなしで走り回る。
  • 展示してある飛行機と似たおもちゃを持っているとそれを取り出して見比べる。
  • アメリカ軍人の家族に話しかけられ、返事はできなかったが、自らF-18のおもちゃを選んで取り出して差し出す。
  • 実物展示機のコックピットに座りたがる(コロナ対策のため実機搭乗は不可)。
  • 飛行機のコックピット体験スペースでずっと座りたがり、操縦桿を絶対に手放そうとしない。何度引き剥がしても戻って来る。他の子が居ないことを確認するとすぐ座ろうとする。
  • 操縦席に座るときは、マーヴェリック仕様のフライトジャケット(父の手作り)を着て乗りたい、と希望してくる。
  • フライトシミュレーターなどの操縦席に座るときは絶対に一人がいい。ママが一緒に座るのは嫌。
  • 風立ちぬ」の九試単座戦闘機の模型が展示されているのを目撃して、初めて親に対して「ほーしーい!」と叫ぶ(なお、お土産屋さんにも航空機のおもちゃはたくさんあったがそれらに対しては「ほしい」と言わなかった)
  • 航空科学館から帰宅してすぐに「風立ちぬ」が見たいとリクエストし、カプローニの「飛行機は美しい夢だ」という台詞の後に、嬉々としてママに向かってその台詞を何度も復唱していた。
  • 帰宅後「風立ちぬ」を2周見る。

3. 映画以外に与えているコンテンツ

 「映画ばかり見せているから映画を好きになったのでは?」と思われるかもしれませんが、我が家では映画を見せるようになる以前から、他の作品も見せています。そもそもyoutube kidsについては、一番低年齢に設定して自由閲覧状態にしてあります。本人が自由に操作できるスマホおよびタブレットを用意しており、本人のリクエストで番組を検索、上映することもあります。

 上記は本人が希望すれば準備して見せていますし、こちらからそれらを見るかを提示し確認する場合もあります。

 しかしながら現状、こうしたコンテンツを見せても、本人から強く希望される頻度が高いのは、前述した映画たちであることのほうが圧倒的に多いです。

4. 親の趣味との乖離

 我が家はもともと映画好きの夫婦です。そのため自宅には簡易的な70インチのホームシアターシステムがあり、子供が映画を見る際は主にそこで見ています。なお、ソフトがブルーレイではないトップガンマーヴェリック、ジュラシックパークジョーズ等は子ども用タブレットでも閲覧できるようになっています。

 子供が親の趣味と共通の趣味を持つ、というと、以下のような仮説が浮かぶかと思われます。

  • 親がそればかり見せているからそれを好きになったのではないか?(選択肢の制限)
  • 親が楽しそうに夢中になってそれを見ているから、理解したくなってそれを見るようになったのではないか?(興味が誘導されているパターン)
  • 親に話を合わせたくて一緒に見ているのではないか?親がそれでしか遊んでくれない、喜んでくれないからではないか?(親に気を使っているパターン)

 しかしながら、前述の表をよく見ていただくとおわかりいただけるかと思いますが、親が夢中になり、熱く語り合うほど好きな作品であっても、子ども自身が全く興味を示さないという作品もいくつかあります。中には、そうした作品の上映中に子供から上映作品の変更を指定される場合もあるほどです。

 親が子供に対して、映画の内容を説明したり、そこに登場している動物などについて注意を引いたりなどしても、全く興味を持たない場合さえあります。

 その一方で、親がすごく熱中してみているわけでもない作品を、子供が好んで見ていることもあります。親が予め見ることを止めるよう声がけをする作品であっても、押し切って見たがる作品もあります(例: ジョーズ)。ジョーズについては、本人はホオジロザメのシーンが大好きで、ホオジロザメのぬいぐるみを持って映画と一緒にごっこ遊びをしながら夢中になって見ています。

 

 このことから、この子における映画に対する「好き」は、かなり子供個人の中で独立して生じている感情なのではないか、と私達は推測しています。

「WALL-E」エンディング考察 - 「ラピュタ」「ナウシカ」「2001」との比較

 PixarによるフルCGアニメ映画「WALL-E(2008)」のエンディングに関する考察です。主に、地球と人間、ロボットとの関係性について、「天空の城ラピュタ(1986)」や「風の谷のナウシカ(1984)」、「2001年宇宙の旅(1968)」からの影響なども含めて考察しています。

※「HELLO, DOLLY!」との関連については、別記事で記載しています

→(書き終わったらリンクを貼り付け予定)

0. WALL-Eのあらすじ

 まだ映画「WALL-E(2008)」を見ていない方、また、見たけれども人間とロボットの関係についてうろ覚え、という方は以下の記事を参照してください。

mymemoblog.hatenadiary.com

1. エンディングの描写について記載

 WALL-Eたち含むAxiomの乗員たちは地球に降り立ちます。そして未だゴミまみれの大地に、EVEとWALL-Eが守り抜いた植物の苗を植えて、栽培をしようと意気込みます。

 その背景には、数多の植物が生い茂りつつある.....という引きの画面で、エンディングとなります。ライターを灯す音と共にエンディング曲の「Down To Earth」が流れ、エンディングアニメーションが映し出されます。まずは、こちらのアニメーションについて振り返ります。

エンディングアニメーション

  1. 単色で描かれた洞窟壁画調のタッチ。Axiomが地球へ帰還し、艦長の指揮のもと苗を植える様子。ロボットが火をおこし、男女は赤ん坊を抱えている。
  2. エジプトの壁画風のタッチ。Axiomの脱出用ポッドから現れ、Axiom艦内で使用されていたドリンクをサーブする人物。脱出用ポッドから降りて火の周りに集まってくる。
  3. 引き続きエジプトの壁画風のタッチ。艦長の指揮のもと、EVEが井戸を掘削。
  4. 古代ギリシャの壷絵風のタッチ。灌漑で作った水路を元に、ロボットと人が協力して農業を行っている様子。麦やブドウが栽培される。
  5. モザイクタイル風のタッチ。海に魚やウミガメたちが戻ってくる。
  6. 鉛筆画風のタッチ。豊かな川の流れの中でロボットと共に網で魚を捕る人間の様子。
  7. 引き続き鉛筆画風のタッチ。ロボットと共存しながら、背景には建築物も見られる。人間は未だ肥満体だが、手足が正常の長さに戻っている。魚を売り買いする人々の様子。
  8. 水彩画のタッチに。ロボットと協力しながら、足場を組みレンガ積みの建物を建てる人々の様子。
  9. 厚塗りの油彩タッチに変化。建築物はさらに増える。海にはヨットが浮かぶ。
  10. 印象派の点描画風のタッチ。子どもたちは野を駆け回り、水辺で釣りをする人物。水面にはいくつものヨットが浮かび、遠景には草むしたAxiomの姿。
  11. 印象派の油彩画風のタッチ。あふれるほど咲き誇る花々。ミツバチや青い鳥の姿。
  12. 印象派の油彩画風のタッチ。大きな木が育った傍に、二人寄り添っているWALL-EとEVEの姿。この木は、艦長が地上に降り立って最初に植えた苗から伸びている。

 上記のような場面が映し出された後、スタッフロールへと続きます。

歴史と連動する絵柄の変化

  • 単色で描かれた洞窟壁画調のタッチは、おそらくラスコーがモデル。ラスコーの洞窟絵は約4万年前に描かれたもの。
  • エジプトの壁画風のタッチは、元となったエジプト壁画の時期を考慮すると、紀元前2000年頃の絵を参考にしている。
  • 古代ギリシャの壷絵風のタッチは、特に体を黒く書いていることから、モデルとなったのは黒絵式の壷絵と推測される。これは紀元前620年頃の絵柄。
  • モザイクタイル風のタッチは、おそらく古代ギリシャ古代ローマ頃に使用されていたモザイクタイルがモデルとなっている。これは時期がかなり開いてしまうが、時代が徐々に下るように組まれていることを考慮すると、おそらく紀元前400年以降を意識していると思われる。
  • 鉛筆画風に至るまでの間がかなり空いている。鉛筆画に関しては元の画風の推測が困難。
  • 水彩画もモデル不明。
  • 厚塗りの油彩画風もモデル不明。
  • 印象派の点描画風のタッチは、おそらくモデルとなっているのはジョルジュ・スーラの画風。19世紀後半の画家。
  • 印象派の油彩画風のタッチは、クロード・モネに近い。19世紀後半から20世紀初頭の画家。

 上記のように、Axiomを降りたあとの人々の生活と、少しずつ自然が回復していく姿、文明が再び発展していく姿が歴史をなぞるように描かれています。またその時代が下っていく様子を、画風を変化させることで、画風の歴史に沿って表していると言えます。

2. 作中の地球と宇宙について振り返り

WALL-Eが住む地球

  • ゴミが地球上の表面を多い、植物がほぼ生えていない(=砂漠に近い天候?)
  • 大気汚染が激しく、青空は見えない
  • 激しい嵐が時折やってくるので、建物内に身を隠す必要がある。この嵐はおそらく、砂漠に吹くハブーブ(haboob)のようなもの。
  • 作中の時代は、おそらく2800年代ごろ(2110年から約700年後)

※宇宙間で地球-Axiomの間を移動している間にどれほどの速度で移動してどれだけの年数が経ったのかの詳細は不明。おそらく数十年の誤差ではなく、数年前後と思われる。

地球上のロボット

  • WALL-Eは「Waste Allocation Load Lifter Earth cleaner」の略称。
  • ソーラー発電で駆動し、理論上はほぼ永続的に行動できる。
  • 地球上には無数のWALL-Eが居たが、いずれも機能停止してしまい、現在稼働しているのは1台(=主人公)のみ。
  • 機能停止した他のWALL-Eのパーツをかき集めて、共食い整備をしながら主人公は動き続けている。
  • WALL-Eが集めたゴミを処理する巨大ロボットなども存在したが、現在は稼働していない。
  • もともとは5年の地球浄化作戦だったため、700年も経つうちに殆どのロボットが動かなくなったと考えられる。

地球浄化作戦

  • 世界大統領により多量のゴミについて緊急事態宣言が発令される。
  • その解決策として打ち出されたのが、宇宙への一時的な移住と、WALL-Eたちを使用した「地球浄化作戦」。
  • 世界大統領が「5年間の豪華クルーズ」と宣伝していたこと、Axiom艦長が「5年の旅に出て700年目、25万5642日目」と語っていることから、おそらく本来は5年で終了する計画だった。
  • 2110年(おそらく地球浄化作戦を開始してすぐの頃、700年後から見ると誤差の範囲。10年以内程度?)に、地球浄化作戦は失敗と判断される。世界大統領から全Axiomのオートパイロットに対して「Do not return to Earth(A113)」が発令される。

Axiom

  • 人間のための居住性に特化した宇宙船。5年間の航行の予定だったはずだが、700年経過しても問題なく稼働している。
  • 複数のAxiomが地球から飛び立った(劇中のCMより)。しかし、劇中に登場するのは1隻のみ。
  • その後、地球上に植物が増えても他のAxiomも地球に降りてきた様子はエンディングでも描写されていない

3. 「天空の城ラピュタ」との比較

(1)筋書きの比較

 「天空の城ラピュタ(1986)」との共通点に着目してみると、以下のようになります。

  • 一人で暮らしている男の子(パズー/WALL-E)のもとに空から女の子(シータ/EVE)がやってくる。
  • 女の子は物語の鍵を握る大切なもの(飛行石/植物の苗)を持っている。
  • 二人は空に浮かぶ立派な場所(ラピュタ/Axiom)へと移動する。
  • その場所で敵(ムスカ/AUTO)と大切なもの(飛行石/植物の苗)の奪い合いになる。
  • 二人で大切なもの(飛行石/植物の苗)の秘められた力(バルス/地球帰還プログラム)を発動する。
  • 二人で地上に戻ってきて、一緒に暮らす。

 このように、実は「WALL-E(2008)」と「天空の城ラピュタ(1986)」は大筋がよく似ているのです。これはおそらくオマージュか、かなり意識して作ったと考えてよさそうです。他の点もそうですが、「WALL-E(2008)」はいくつかの宮崎駿作品を考慮して作っていると考えられます。

 また、筋書きだけではなく、「眉間からビームを出して焼き切る」という機能の点もWALL-Eとロボット兵の共通点となっています。

(2)「Down To Earth」と「ゴンドアの谷の歌」

 「WALL-E(2008)」のエンディング曲は「Down to Earth」という曲です。このDown to Earthというタイトルは、本来の意味は「地に足のついた」というニュアンスの語ですが、ここでは作中の「宇宙から地球に戻ってくる」という展開も含めて込められたタイトルとなっています。このエンディング曲は字幕版で和訳が付いていません。和訳についてはこちらのウェブサイトに詳しく記載されています。

Down To Earth(ダウン・トゥ・アース)英語歌詞の和訳と解説|ウォーリー

 今回私は、この歌のサビの部分と、「天空の城ラピュタ(1986)」の作中でシータが言及する「ゴンドアの谷の歌」について比較したいと思います。

日本語版の「ゴンドアの谷の歌」

 「天空の城ラピュタ(1986)」で、ラピュタ復活を目論むムスカによって玉座の間に追い詰められたシータは、以下のようなセリフで応えます。

「今は、ラピュタがなぜ滅びたのかあたしよく分かる。ゴンドアの谷の歌にあるもの。
土に根をおろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春を歌おう。』
どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんの可哀想なロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ!」

北米字幕版

 北米版の英語字幕では、この「ゴンドアの谷の歌」は以下のように翻訳されています。

This is why Laputa died out. There's a song in my valley...

Put down your roots in the soil,

Live together with the wind.

Pass the winter with the seeds, 

sing in the spring with the birds.

Your weapons may be powerfil. Your pitiful robots may be many. 

But you can't survive apart from the Earth.

北米吹替版

 北米版の吹替版はさらにセリフが異なっています。

Now I understand why the people of Laputa vanished. There is a song from my home in the Valley of Gondoa that explains everything. It says

Take root in the ground,

live in harmony with the wind,

plant your seeds in the winter,

and rejoice with the birds in the coming of spring.” 

No matter how many weapons you have, no matter how great your technology might be, the world cannot live without love.

※この赤字で強調した部分の、英語吹替版で「愛なしには生きられない」と翻訳されてしまっている問題点については、こちらのブログやアマゾンのレビューで議論されています。

今更「天空の城ラピュタ」の名シーンの英訳について考える | つれづれ日記 deux

Spectacular Ghibli film in original Japanese, atrocious dub and sub

Down to Earth

 一方、「WALL-E(2008)」の「Down to Earth」のサビの歌詞は以下のようになっています。この曲ではこのサビを何度も繰り返し歌います。

We're coming down to the ground
There's no better place to go
We've got snow up on the mountains
We've got rivers down below
We're coming down to the ground
We hear the birds sing in the trees
And the land will be looked after
We send the seeds out in the breeze

 ぱっと見た範囲でキーワードとして共通する点を強調してみましたが、この歌詞もまた「ゴンドアの谷の歌」をかなり意識していることがわかるかと思います。

共通点

 「Down to Earth」の歌詞と「ゴンドアの谷の歌」の日本語、英語字幕、英語吹き替えの似たセンテンスを並べて比較してみます。

We're coming down to the ground, There's no better place to go

→土に根をおろし/ Put down your roots in the soil(字幕)/ Take root in the ground(吹替)

 

We hear the birds sing in the trees

→鳥と共に春を歌おう/ sing in the spring with the birds /rejoice with the birds in the coming of spring.

 

We send the seeds out in the breeze

→風と共に生きよう/Live together with the wind(字幕)/ live in harmony with the wind(吹替)

→種と共に冬を越え/Pass the winter with the seeds(字幕)/ plant your seeds in the winter(吹替)

 

 全く同じ意味を歌っているわけではありませんが、「地上に降りてくる理由」「地上で大切にすべきもの」についてキーワードとして使用しているもの(土、鳥、風、種)が共通しています。やはり、「WALL-E」という作品はかなり「天空の城ラピュタ」を意識して作ったのでは?と私は考えています。

 また、Pixarのスタッフはおそらく、英語字幕版か英語吹き替え版を見て参照したのでは?と考えましたので、今回は英語版との比較を用意してみました。

 

 また、ゴンドアの谷の歌ではありませんが、その後に続くシータのセリフ

「土から離れては生きられないのよ!(英語字幕: But you can't survive apart from the Earth!)」

ですが、ここもまた曲名である「Down to Earth」につながっている要素であると私は考えます。

(3)ラピュタのこたえとの比較

 では、Pixarのスタッフは「天空の城ラピュタ」から要素だけを借りて作ったのでしょうか?その点についても考えてみたいと思います。

「土から離れては生きられない」

 先程も記載したように、シータはムスカと対峙するシーンで、ゴンドアの谷の歌を引用した後に以下のセリフを叫びます。

どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんの可哀想なロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ!

(英語字幕: Your weapons may be powerfil. Your pitiful robots may be many. But you can't survive apart from the Earth.)

(英語吹替:  No matter how many weapons you have, no matter how great your technology might be, the world cannot live without love.)

 ラピュタのほうは、この「生きる」について英語字幕ではsurvive、英語吹替ではliveと表現されています。ここのセリフの翻訳については、字幕版のほうが比較的マシな翻訳になっています(吹替はセリフが違いすぎる......)。

  ここと対になるのは、おそらくAxiom艦長がAUTOに対して叫んだこのセリフでしょう。

AUTO「ここだと生き残れます(On the Axiom you will survive.)」
艦長「生き残るよりも生きたい!( I DON'T WANT TO SURVIVE! I WANT TO LIVE!)」

 ラピュタ人の末裔でありながら、地上に降りて土と共に生きてきたシータは、「土からは離れては生きていけない」というニュアンスで語っています。その一方、これまで地上で生きたことがない艦長は、「土と共に生きたい」というニュアンスが含まれています。このスタンスの違いは、エンディングの描写にもかなり大きく影響していると私は考えます(詳細後述)。

「たくさんのかわいそうなロボット」

 ところで、シータが言う「たくさんのかわいそうなロボットを操っても」というセリフは、WALL-E本編の内容にも関わってくるものと考えます。というか、これがWALL-Eという作品の出発点にもなっていそうなくらい、重要なセリフと私は考えます。

 シータの言う「かわいそう」の範囲はおそらく、「ラピュタ」における無残に殺されていった数多のロボット兵ばかりではなく、園庭のロボット(下図)も指していると考えられます。主人を喪ってもなお働き続け、目的を失いながらもその役目を全うしようとするロボットたちの姿を指しているのではないでしょうか。

 「WALL-E」で描かれているロボットのうち、地球上で荒廃し機能停止してしまった他のWALL-Eたちや他のロボットたちは、上図の機能停止した園庭ロボットの姿とも重なります。また、自分たちの仕事内容に縛られ続け、異なる行動を行ってしまうとAxiom内の「修理室(Repair Ward)」に送られてしまうことも、「かわいそうなロボット」に含まれるのでしょう。

「好き」という異常(エラー)

 地球でただひとり生き残り、ロボットとしては"異常"な、好きなモノを愛して生きるようなWALL-Eの側面も、Axiom内の基準では「修理行き」になりうるのです。故に、EVEが修理してしまったWALL-Eは、一時的に"異常"が消え、モノやEVEへの愛情、愛着を失ってしまう描写がされています。

 Axiom艦内の修理室に隔離されていた"異常"なロボットたちもまた、WALL-Eと同様の「好き」を持ってしまったロボットなのではないでしょうか。「好きな色を塗りたい」、「ロボットにお化粧をしたい」というような自由意思は、修理行きとなってしまい、Axiomのロボットたちには許されていないのです。そんな彼らがWALL-Eが愛した歌を好み、一緒に歌ったというのも、「何かを好きになる」という"異常(エラー)"を抱えていたからでしょう。

 だからこそ、彼らはエンディング直前のシーンで、彼らたちが寄り添って描かれていたのかもしれません。"異常(エラー)"を抱えてしまい、本来であれば修理に回され、その獲得した"異常(エラー)"=個性を消されてしまうはずだった、「かわいそうなロボット」たち。そんな彼らも、Axiomから開放され自由になり、互いに寄り添って生きていけば、「かわいそう」ではなくなる、とPixarは考えたのかもしれません。

 

 なお、このWALL-Eが抱えていた"異常"については、次の「ナウシカ」との話にもつながってくるものであると私は考えます。

4. 「風の谷のナウシカ」と比較

 上記で「ラピュタとの類似性」について語りましたが、この作品の背景設定については「ナウシカにも近い」といえる部分があります。

mymemoblog.hatenadiary.com

なお、私の中でのナウシカの考察は上記にまとまっています。

(1)背景設定の比較

  • 人間の手によって汚染(火の七日間/ 地球がゴミまみれ)が進み、大気も汚染され(瘴気 / 空気汚染)、居住可能な場所が減った世界。
  • 汚染された地球の浄化が進められる(腐海の森による浄化/ WALL-Eによるごみ処理)。
  • 長期間(1000年/700年)経過し、植物の芽が生えた(アニメ版では腐海の底のチコの芽 / WALL-Eの見つけた苗)ため、次の住む場所(腐海の底=蒼き清浄の地 / 地球)が決まる。

 前章ではWALL-EとEVEをめぐるメインストーリーは「天空の城ラピュタ」に類似していることを指摘しました。その一方で上記のように、地球の汚染やその浄化に関する描写はむしろ「風の谷のナウシカ」のほうに類似していることがわかります。こちらもやはり、荒廃世界ものという共通のミームを参照しているという点だけでなく、主人公の立ち位置も含めて、ある程度意識して作っていると考えられます。

(2)主人公が抱えている"異常"と、築いた絆

 私は以前のナウシカ考察のブログで、「ナウシカにはテレパス能力があった」という推測をしています。この能力を持っている人間はアニメ版には他に存在していません。いわば、このテレパス能力は「風の谷のナウシカ」における"異常"な能力なのです。

 ナウシカはこのテレパス能力によって蟲や生き物たちと心を通わせ合うことで、人々が恐れる蟲を愛し、信頼関係を築き上げました。そしてその信頼関係によって、ナウシカは最終的に、自分の身を犠牲にしてでも、人々を蟲の暴走から守っています*1ナウシカは人と蟲との間を取り持ち絆を結ぶ存在として描かれているのです。また、ナウシカは人々に「次に居住できる場所」を導く存在としても描かれています。

 

 WALL-Eもまた、前章で述べたように、「モノを愛する、愛着を持つ」という"異常"を持っています。本来であればこの機能はロボットには備わっておらず、修理室送りとなってしまう機能であり、そして修理されるとそれは消えてしまいます。

 この"異常"を持っていたからこそ、WALL-Eは「ロボットとして与えられた自分の使命を手放してでも」、EVEと一緒にいるために地球を離れる決心をすることができました。

※この「使命を手放して愛に生きる」点については、別記事の「HELLO, DOLLY!」との話にもリンクします。

 そうしてWALL-EがAxiomに乗り込んだことにより、バーチャル越しでのやり取りしかしない無関心な人間ばかりだった環境に、「互いに興味をもたせ」「地球に興味をもたせ」るような変化をもたらしました。つまり、WALL-EがAxiomの中を動き回ったことにより、人間たちもまた、人への愛、地球への愛、そしてロボットへの愛(WALL-Eの損傷を悼む等)、を抱くようになったのです。また、WALL-Eは最終的に、その身を犠牲にしてでも地球に帰ることをやりとげようとします。

 WALL-Eは、人とロボットの間に信頼関係と愛を築き上げたのです。WALL-Eもまたナウシカと同様に、人とロボットの間を取り持ち絆を結ぶ存在として描かれているのです。そして愛したものの愛によって死から蘇ることもナウシカと共通しています。

 加えて、そもそも「WALL-E」の物語は、WALL-Eが植物の苗を見つけたことから始まっています。これもまたナウシカ同様に、人々に「次に居住できる場所」を導く存在としても描かれています。

 

 下記に、ナウシカとWALL-Eの共通点を記載します。

  • "異常"な能力(テレパス / モノへの愛着)の獲得により、愛するもの(蟲たち / EVE)への愛情を抱く。
  • 異なる者同士(蟲と人 / ロボットと人)との間に絆を結ぶ。
  • 構築された信頼関係を信じた上で、自分の身を犠牲にして目的を果たす(谷の人を守る / 地球への帰還を果たす)。
  • 愛したもの(王蟲 / EVE)から愛されることによって、死から復活する。
  • 次の移住先(蒼き清浄の地 / 地球)へと導く。

 

 よって、PixarはWALL-E制作にあたり、「劇場版ナウシカ」のこともかなり研究したのだろう、と私は考えています。

5. 「2001年宇宙の旅」からの考察

共通点

 この「WALL-E」という作品は明らかに「2001年宇宙の旅(1968)」も意識しています。以下に重要なシーンにおける共通点を記載します。

  • 無機質な声で話す"赤い一つ目"を持つAIが船を操縦し支配している(HAL9000/ AUTO)。
  • このAIは人間から、本来の指示(乗員と協力して木星を探査せよ/ 植物を見つけたら地球へ帰還せよ)と矛盾する極秘の指令(乗員にモノリスのことを話すな/ 地球へ帰還するな)を受け取っていた。
  • このためAIは適切な行動を選択できなくなり、解決するために結果的に人間に対して危害を加えてしまう(船員の殺害/ 艦長の監禁等)。
  • 人間は、そのAIのスイッチを切ることによってAIの暴走を食い止める。

 「WALL-E」では人間はロボットとそれなりに共存・協力しながら地球に降りることができましたが、「2001年宇宙の旅」では殺し合いとなってしまっています。あくまで「WALL-E」は子供向け......と言いたくなるところではありますが、ここから連想できる点が見えてきます。

他のAxiomたち

 Axiomに関する概要については、「2. 作中の地球と宇宙について振り返り」でも記載しました。

 本来であれば複数のAxiomが地球から飛び立っているにも関わらず、地球に戻ってきたと思しきAxiomは作中の一隻のみです。植物がこれだけ繁茂しているにも関わらず、他のAxiomのEVEが探査に来ている様子も見られません。エンディングまで含めても描かれていません。

 続けようと思えば700年も航行を続けられるシステムが搭載されているAxiomが機能しなくなるとすれば、それは内部から崩壊・破綻してしまった可能性が考慮されます。

 この情報を、「2001年宇宙の旅」の展開と重ねて考慮すると、いくつかの可能性が浮かんできます。

他のAxiomたちの顛末(推測)

 「地球に帰還するな」という極秘命令に従い、未だ宇宙で「地球で植物が見つかった」という事実を秘匿し続けているAUTOがいるかもしれません。あるいは、そもそも植物探査ロボットEVEを地球に派遣していない場合も有りえます。

 「地球に帰還するな」という極秘命令を受け取ったAUTOが、作中のAUTOと同様に、「発見された植物の苗を極秘に消滅させる」という対応を取らなかった可能性があります。もっと過激な方法――例えば、そもそも帰還させる必要のある人類を"処分"する、という場合もありうるでしょう。その場合は、船内における人間の"飼育"を中断すればよいだけで済みます。

 もしくは、「5年経っても地球に帰れない」ことに疑問を持った人間が乗った船で、人間側の反乱などが起きたり、作中のように無理やり地球に戻ろうとした人類が居た可能性もあります。そのような「極秘命令に反する人類」が多数発生した場合.....これもまた、ロボットやAIとの衝突になるでしょう。

 作中のように植物が発見されていたとしても、WALL-Eという「地球と宇宙をつなぐ存在」「人とロボットをつなぐ存在」が不在のままであれば、人とロボットが協力して地球に帰ろうとする、という動きにはつながらなかったと考えられます。

 「WALL-E」という作品において、「人間から矛盾する極秘命令を受け取ったAIが、人間の命綱を握っている」という状況が「2001年宇宙の旅」と重なっていることから、その顛末、つまり「AIが人間を殺してしまうことで解決しようとする」ことの可能性が残り続けるのです。

「汚染レベルが高いため、地球に住むことはできない (rising toxicity levels have made life unsustainable on Earth.)。」

「地球には戻るな(Do not return to Earth)」

 このような説明と指示を受け取っているオートパイロットから見れば、「住むことができない地球に戻ろうとする人類」は、「遅かれ早かれ死亡してしまう」存在に見えることでしょう。そのため、結末が同じならば殺害する......という選択肢を選んだAUTOが居ても不思議ではないと私は考えます。

6. 「HELLO, DOLLY!」と「WALL-E」

 劇中で引用されているミュージカル映画「HELLO, DOLLY!」との関係性については、以下の記事で考察しています。

→(下記終わり次第リンク記載予定)

 

7. エンディング描写について考察

 さて、ここまで「WALL-E」に影響を与えたと思しき作品についての比較と考察を進めてきました。ここで本題の、「WALL-E」のエンディングについての解釈を進めていきたいと思います。

(1)「I DON'T WANT TO SURVIVE! I WANT TO LIVE!」

 ロボットとの絆が結ばれたことによって、無事に地球に戻ってくることができたAxiomとその乗員。彼らはロボットと共に人類史の発展を一からなぞり直しながら、次第に都市を発展させていきます。

 しかしながら、そこには人類史には必須のはずの「飢餓」「貧困」「戦争」はありません。700年もの航海を可能としていたAxiomが稼働したまま、かれはら食糧難に飢えることもなく、住居に困ることもなく、Axiomの傍で生活を続けています。その証に彼らは

  • 食事はAxiomの飲料でまかないつつ、肥満体が維持できるほどの栄養を摂取し
  • 住居は既存の脱出ポッドでしばらく生活をし、
  • 時折農業や漁業、建築業をロボットと共にたしなむ

 という形で描写されています。つまり彼らは、降り立った先の地球上でさえ、「SURVIVE」のために生業をしているのではなく、「LIVE」ためにやっている、と言えてしまいます。よって、

「 I DON'T WANT TO SURVIVE! I WANT TO LIVE!」

と叫んだ艦長の意思はかなったといえるでしょう。

 土から離れて暮らしてきたからこそ、「土と共に生きたい」と願った艦長の言葉によって生まれた生活は、生存のための暮らしではなく、(露悪的に言えば)「趣味としての生活」と言えてしまうかもしれません。

 衣食住に不足すること無く、満ち足りた上で趣味として農業などを嗜む。それはまるで、マリー・アントワネットがプチ・トリアノンに作った農村のようなニュアンスさえ残ります。

(2)「おだやかでかしこい人間」

 「2001年宇宙の旅」からの考察の章で記載したように、ほかのAxiomたちが降り立ってこなかった原因として、人間とロボットとの内乱とそれによる破滅・崩壊があったのではないか、という予想を述べました。

 しかし本作で地球に戻ってきたAxiomは、700年ものあいだ、ロボットと揉めることもなく、ただ怠惰に穏やかに生き続けてきました。いわば作中で描かれたAxiomでは、人間は攻撃性を失い自己家畜化に成功した、と捉えることもできます。

 この、「人が居なくなった地球に改良された人類が降り立って再び文明を発展させる」という観点から考えると、実は原作のナウシカ終盤のストーリーに重なってきます。作中のAxiomの中の人々は、いわば下記画像右下コマでナウシカの言う「凶暴ではなくおだやかでかしこい人間」と言えるでしょう。

漫画版「風の谷のナウシカ」第7巻 211ページより引用

 Pixarの「WALL-E」制作スタッフがどれほど漫画版ナウシカまで研究したのかは不明です。しかし「WALL-E」という作品の結末は、奇しくも、漫画版ナウシカナウシカがたちが破壊した墓所の卵を、破壊せずに孵した状態、に近くなってしまっています。漫画の中でヴ王が「そんなものは人間とは言えん......!」と否定したものを、Pixarは「理想の人類」として描いたのかもしれません。

(3)人類がやり直すには

 地球を汚し、破壊してしまう人類が地球を再び美しい星に戻すには。やり直すには。「WALL-E」で描かれたエンディングを元にそれに対する回答を考えると、以下のようになってしまうと、私は考えます。

  • 人間自体に闘争心がなくなり、自己家畜化が完了する。
  • ロボットと共に生きて人類史をやり直すことにより、奴隷階級(危険な作業を担う)の人間を減らすことができる。
  • 無限に供給される食料が与えられることにより、環境に配慮した農業・漁業ができる
  • 飢えることがなく、闘争心もなく、支配-被支配の構造が人間の間に発生しないため、戦争が起きない。

 .......が、画餅!!!!!!

 いや、子供向け映画になに言ってるんだ、って感じではあるのですが。まさしく宮崎駿が漫画版ナウシカで「そんなものは人間ではない!」と言い切り破壊したそれそのものの世界というか、要は「エデンの園から出ないで済んだらよかったのにね」みたいななんかそういう話になってませんか?

 旧約聖書的には「エデンの園から追い出されたら肉体労働によって収穫を得る=農業をしなきゃいけない」ので、そういう意味ではAxiomから出て農業をしているのはむしろ自主的な失楽園ともいえるのですが、彼らはAxiom≒エデンの園にいつでも戻れる状態である以上、厳密な失楽園の状態とも言えません。

 というかこの回答だと地球上で現時点でsurviveのために生業をして生きている人間の全否定と言いますか、完全な理想状態じゃないと無理だよねー、という逆にすごい皮肉なのかもうわからないのですが、いやこれそういう皮肉なのかな?所詮人間には無理っていう諦めなの?

 ......取り乱しました。

 この点については私自身はっきりとした答えは出せていないのですが、おそらくは、2つのパターンが考えられると思っています。

  • あくまで子どもたち向け→子どもたちには希望に溢れた未来を思っていてほしい→そう思って作ってみた結果、事実上無理という結果をオブラートに包んで突きつけることになっている。
  • 「まあぶっちゃけ無理だよね」という諦観を逆に「ありえないほど明るい未来」として描いている。

 どっちなんでしょう......。私にはわかりません。ただ、「ラピュタ」「ナウシカ」や「もののけ姫」を生み出した宮崎駿とは違う回答を出したいという思いがあったのかな、というのは感じます。それが実現可能な回答かどうかは置いといて.....(表裏一体で結局同じこと言ってしまっているのではという気もします)。

 

 少なくとも、下記のような人間観とは異なったところに人間としてのゴールを置いてしまっている、とも思います。

漫画版「風の谷のナウシカ」第7巻 200ページより引用

8. パクリ?オマージュ?ラブレター?

 私自身は、「WALL-E(2008)」という作品を、「天空の城ラピュタ(1986)」や「風の谷のナウシカ(1984)」のパクリだとは思っていません。この作品中における「2001年宇宙の旅(1968)」「HELLO, DOLLY!(1969)」への態度と同様だと考えています。

 Pixarジブリと提携していることから、ジブリ作品を研究していた、もしくはそこに感銘を受けて作った宮崎駿へのラブレター的な作品と考えています。

 ラピュタナウシカと同じ問いを用意した場合に、Pixarなりの答えの出し方をしたのが「WALL-E(2008)」なのでは、と考えています。

(その出した答えに対する是非は、私は保留しておきます)

 

 私個人としては、Pixarが作り出したWALL-EやEVE、M-O、AUTOというキャラクターたちは、皆素直で一生懸命で愛おしいと思っています。それにストーリーも描写も、子供と一緒に見ていてとても楽しいと思える作品です。

 ただしこの作品を元に、人間としてどう考えるべきかについては......ゆっくり考えていきたいと思います。

WALL-Eあらすじ

 PixarによるフルCGアニメ映画「WALL-E(2008)」のあらすじについてまとめた記事です。別な記事で考察をするために書き出したのですが、映画の描写を詳細に書き出してしまったため、独立記事になりました。

 主に人間とロボットとのかかわり合いを中心に記述しています。

はじまり

 世界中をBuy n Large社(以下、BNL)が支配した世界。巨大なスーパーの経営から、あらゆる商品の提供がBNLによって行われ、世界中の広告がBNLのもので覆い尽くされていた。BNLはその経済規模を広げ、ガソリンスタンドなどのライフライン、そして銀行、独自通貨の発行まで担っていた。

 地球上は大量消費の果てにゴミだらけとなり、地球の衛星軌道上もスペースデブリまみれでケスラーシンドロームもびっくりの散らかり具合。地球の表面は大量のごみの山と大気汚染に満ち、青空はなく、ビルのように見えるものはうず高く積まれたゴミの山々。

 打ち捨てられた新聞は、地球上にあふれかえるゴミ問題について、世界大統領が緊急事態宣言を発令したとの文字が踊る。

 1950-60年代のCMを思わせる軽快なジングルが、荒廃した無人の町に響き渡る。

Buy n Large is your super store
we've got all you need and so much more

Happiness is what we sell
That's why everyone loves BNL

 「WALL-Eがゴミを片付けます!」と宣言する看板と、故障して動かなくなった清掃ロボットWALL-Eたちが無数に転がっている景色。近くにはWALL-Eたちが集めたゴミを処理していたであろう多くの巨大なシステムが、もはや駆動しないまま放置されている。

 BNLが経営する駅の前で、軽快な口調で語るCMが自動再生で流れる。

「地球がゴミだらけ?ならば広い宇宙へ飛び出そう!BNL宇宙船(star liner)は毎日運行!あなたの留守中にお片付けします!」

BNL船団の最高峰、宇宙船Axiomで、5年間の豪華クルーズを。24時間ロボットがお世話します。艦長とオートパイロットが素晴らしい旅をお手伝い。エンターテインメントも盛りだくさん。艦内ではホバーチェアがご利用できますので、歩く必要もございません。Axiomは夢のstar liner!」

世界大統領「BNLの旅で宇宙は最高の楽しい場所(fun-tear)へ!」

(Because, at BNL, space is the final "fun"-tier.)

 町にはもはや人の気配はない。そんな世界に共食い整備の果てにただひとりだけ生き残り、ごみ処理作業を続けている清掃ロボット、それが主人公のWALL-Eだった。

地球を飛び出す

 ひとりで暮らしていたWALL-Eの元に、地球上に植物が生えたかどうかを探索しにきたロボットEVEがやってくる。これまでずっと一人きりだったWALL-EはEVEに心惹かれてしまう。彼女に植物を手渡したところ、彼女は植物保存のため休眠状態に陥る。WALL-EがEVEを毎日大切に守りながら過ごしていたところ、ある日探査船が戻ってくる。EVEを迎えに来たのだ。EVEと別れたくないWALL-Eは探査船にしがみつき、探査船と共に宇宙へと飛び出す。探査船は巨大な宇宙船Axiomに収容された。

宇宙船の中の人類の様子

 Axiomでの700年の宇宙航海の間に、人類の体格はかなり変化していた。全員がホバーチェアを利用し、自ら歩くこともない。食事は全てストローから吸引するドリンクばかりで、自ら体を動かして運動することもない。船内の低重力の影響から骨密度は低下し、骨格は退化し、極端に肥満、そして短足に変化している。赤ん坊も乳児期からロボットにより養育されている。

 ホバーチェアから転落し転倒すると、自力で起き上がることもできない。しかしそんな誰かへの関心すら人々は持ち合わせておらず、転んだ当人もただロボットが救助に来るのを待つことしかできない。

 船内はBNLの広告で埋め尽くされているが、人々は画面に夢中で通りすがる景色に視線を向けることはない。艦内にプール施設があることにさえ気づいていない者もいる。人々は互いに触れ合うことも、直接会話することすらしない。バーチャルでのビデオチャット越しに、この退屈な生活への不平不満を口々に喋り続けているのだった。

Buy N Large. Everything you need to be happy. Your day is very important to us.

 色とりどりの鮮やかな広告が瞬く中、語りかけるような放送が艦内に響く。

 何もかもが満ち足りている700年のAxiom生活だが、恵まれているが代わり映えのない日々に人々は(艦長も含め)退屈していた。

宇宙船Axiomの中で

 Axiomでは、植物探査ロボットが光合成する植物を採取した場合、それは「地球上が居住可能空間になった」と判断する根拠となり、それを合図に地球へと帰還する予定だった。しかしこれまでに探査ロボットが植物を持ち帰ったことはない。この度、航行700年目にして初めて、EVEが苗を持ち帰ったことで地球帰還プログラムが初めて起動し、「再植民地化計画(Operation Recolonize)」が始動することになった。

 しかし、EVEは命令どおり植物の苗を持っていったはずだったが、その植物の苗がなぜか無くなってしまう。地球帰還プログラムは一旦中止になってしまったが、今の生活に退屈しきっていた艦長は、これをきっかけに地球に対する興味を持ち始めていた。

 なんやかんやしている内に、「発見された植物を抹消しようとしている」ロボットたちが居ることが判明。そこから植物の苗を奪い返し、皆で協力し艦長の元へと届ける。しかしオートパイロットのAUTOがそれを没収しようとしていた。理由は約700年前に世界大統領により発令された極秘命令、「地球の帰還阻止(コードA113)」。

「オートパイロットの諸君。悪い知らせだ。地球浄化作戦は失敗に終わった。汚染レベルが高いため、地球に住むことはできない。残念だが、再植民地化計画(Operation Recolonize)は中止。だから、航行を続けるように。この問題を解決するより、宇宙に居続けたほうが楽だ(Rather than try to fix this problem, it'll just be easier if everyone remains in space.)。」

「それでは命令A113を変更する。オートパイロットに告ぐ。全てを指揮し、地球には戻るな。繰り返す。地球には戻るな(Do not return to Earth)。」

 AUTOはこれまでの約700年間、このA113の命令を遵守し続けてきたのだった。

地球に戻ろう

 約700年前に出されたA113の頃とは状況が変わり、ついに地球は植物が育成できる環境になった。それを理由に艦長は地球への帰還を志すが、AUTOはそれを許諾しない。

艦長「事態は変わった!帰るぞ!(Auto, things have changed! We've got to go back!)」

AUTO「艦長、命令は"地球へ帰るな"です。(Sir, orders are: "Do not return to Earth".)」

艦長「今は住めるんだ。これを見ろ、青々と育ってる!彼は間違ってるぞ!(But life is sustainable now! Look at this plant, green and growing! It's living proof he was wrong.)」

AUTO「無関係です(Irrelevant, Captain.)」

艦長「大いに関係ある!あそこにあるのは我々の故郷。故郷が大変な時にじっとしていられるか。今までなにもしなかった。(What?! It's completely relevant! Out there is our home! Home, Auto! And it's in trouble! I can't just sit here and...and...do nothing! That's all I've done! That's all anyone on this blasted ship has ever done... NOTHING !!)」

AUTO「ここだと生き残れます(On the Axiom you will survive.)

艦長「生き残るよりも生きたい!( I DON'T WANT TO SURVIVE! I WANT TO LIVE!)

AUTO「命令に従ってください(Must follow my directive.)」

艦長「ああもう!......私はAxiomの艦長だぞ。我々は本日より故郷へ向かう(I'm the Captain of the Axiom. We are going home today!)」

 Axiomでは植物の存在そのものが地球帰還プログラムの発動スイッチとなっているため、ここから地球に帰還させたくないAUTOたちとの間で苗の争奪戦が始まる。AUTOは真実を知った艦長を監禁し、EVEとWALL-Eを廃棄しようとする。人間は地球で生きていくために、EVEは破壊されたWALL-Eを修理するために、それぞれが地球へ向かおうと、何がなんでも苗を取り戻そうとする。

 すったもんだの末に地球帰還プログラムが起動。AUTOに幾度も妨害されるものの、艦長は自らの足で歩くことを選択し、ついにAUTOの自動操縦(auto pilot)モードを手動でオフにしてマニュアル操縦モードに変更する。

艦長「AUTO, you are relieved of duty!

AUTO「NOOOOOO!!!」

 無事に苗をセットし地球帰還プログラムが始動、ハイパージャンプで地球へとひとっ飛びに帰還する。

そして地上へ

 地球へ帰還したAxiomから自らの足で降り立つ人々。EVEは大急ぎで壊れたWALL-Eの修理に向かう。WALL-Eの犠牲に敬意を表す人々。

 EVEの献身により無事WALL-Eはもとに戻り、Axiomから降りた人々は艦長の指揮のもと、「栽培」を始め、地球での生活を開始する。その頃地球はWALL-Eの掃除の甲斐もあってか、地表に土が現れ、少しずつ植物が生い茂りつつあるのだった。(終わり)

デッキブラシの勇気 - 劇場版「魔女の宅急便」終盤考察

 劇場版「魔女の宅急便」のクライマックスシーン、キキがデッキブラシに乗ってトンボを助けに行くシーンにおける、デッキブラシの挙動について考察しました。

 私としては、このデッキブラシは高所恐怖症だったのでは?という仮説を考えています。

 

※注意※

  • 以前考察した内容のまとめ直しになります。
  • 本編の時刻は北米版Blu-ray Discの時間を記載しています。
  • 画像は全て以下のページから引用しています。

魔女の宅急便 - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

 

1. 本編における描写の振り返り

 作中におけるデッキブラシの描写についてまず確認します。

  1. テレビ中継で飛行船が強風で吹き飛ばされる*1
  2. トンボが宙吊りになっていることにキキが気づく。
  3. キキがトンボを助けに向かう
  4. パトカーが飛行船から落ちる
  5. キキが掃除のおじいさんからデッキブラシを借りる
  6. キキが何らかの処置を行いデッキブラシに変化を与える
  7. デッキブラシの毛先が毛羽立つ
  8. デッキブラシが浮かぶ
  9. キキが「飛べ」と言うとデッキブラシが高く飛び上がる
  10. 飛行船と同じ高さでは不安定にふらふらと飛ぶ
  11. デッキブラシが急に降り、キキが屋根の上に落ちる
  12. テラスや通路の中を通る
  13. 屋根より高いところへ飛び上がり、キキが「まっすぐ飛びなさい、燃やしちゃうわよ!」と叱咤
  14. 飛行船が時計塔にぶつかる
  15. キキが「もっと早く!」と叫ぶと、デッキブラシが再び勝手に地面スレスレを飛行し、ものすごい速度で飛行船に近づいていく。キキは「こらー!」と怒っている。
  16. 飛行船の船尾が倒れて建物に引っかかる
  17. テレビの実況が入る
  18. トンボを助けに近寄るが、ガタガタと飛んでしまい飛行が安定せず、トンボに手が届かない
  19. トンボがロープから手を離し落下する
  20. 背景にある建物の屋根よりも低い高さの空中でようやくトンボの手を掴む
  21. ゆっくりと安定した速度で降りてくる

と、上記のような流れで描かれています。

 デッキブラシの反応をここから抽出してみると、

  • 地面から離れて高くなればなるほど飛行が安定しなくなる
  • 屋根の上よりも高い位置ではふらついた飛行になる
  • 地面の近くを飛ぶほうが早く移動できる

 という傾向があることから、私は「デッキブラシは高所恐怖症だったのでは?」という仮説を考えました。

2. 「魔女のほうき」の性質について

 作中において、魔女のほうきがどのような性質を持つものかについての描写は少ないですが、描かれている内容についてピックアップしてみます。

(1)「嵐にも驚かずに飛ぶ」

 まず、冒頭のキキが旅立つ際に自作のほうきを持っていこうとするシーン。母親がそれをたしなめ、自分の作ったほうきを持っていくようにと勧めます*2

母親「あなたそのほうきで行くの?!」

キキ「うん!新しく作ったの!かわいいでしょー」

母親「だめよー、そんな小さなほうきじゃ。お母さんのほうきを持っていきなさい」

キキ「やだぁそんな古いの」

母親「だからいいのよ。よーく使い込んであるから、嵐にも驚かずに飛ぶわ。ね?そうしなさい」

キキ「......せっかく苦労して作ったのにー。ねえジジ?」

 このやりとりから、

  • 魔女のほうきにも経験が必要。ほうきを使い込むことが重要。
  • 経験の少ないほうきは、驚いて飛べなくなる場合がある
  • ほうきには大きさも重要

 ということが示唆されます。

 この「ほうきの大きさ」に関しては、後半のデッキブラシにもある程度影響しているかも知れません(デッキブラシはほうきと比べると毛先が短いため)。

 実際に、母親のほうきに乗ったキキは、雷雨の中を飛んでいる際*3も、少し揺らいだ程度で雨の中でも飛び続けることができていました。

 また、ほうきがカラスたちに攻撃されついばまれた際には、かなり本気で「やめなさい!」と怒っています*4。ほうきと毛先の長さの関係はそこからも重要であることが推測されます。

(2)自作のほうき

 キキは旅立つ際、自分で作ったほうきに乗ろうとする様子もありました。また、一度母のほうきを折ってしまった際に自分で修理をしたりもしています*5。ここから、

  • キキは自分で箒をつくることができる
  • キキには、ほうきが"生まれて"はじめて飛ぶ際の飛ばし方のノウハウが有る

と推測できると考えます。

 このノウハウがもともとあったことによって、「そのへんのデッキブラシを借りてすぐに飛ぶ」という発想につながったのではないかと考えます。

(3)ほうきの扱い

 キキが「初めて乗る」ほうきの描写は、最初の母親のほうきに乗って旅立つシーンと、デッキブラシのシーンの2回あります。

 母親のほうきに乗って飛び立つシーンでは、ふわりと浮いた後に地面に降りようとするほうきをキキがピシャリと叩くと、勢いをつけて荒っぽく飛び立ちます。木々にぶつかって鈴の音が鳴る様子は印象的なシーンです*6

 また、デッキブラシを初めて飛ばす際には、「飛べ」と命令しています。

(4)飛ぶための処置

 これは推測でしかありませんが、ふつうのほうき(デッキブラシ含む)がまず飛べるようになるためには、魔女によってなんらかの前処置が行われる必要がありそうです。これによりデッキブラシの毛が毛羽立ち、飛行できるようになります。飛行道具としての自我を目覚めさせるとか、魔女のエネルギーを伝えやすくるとか、なにかそういう処置だと思われます。

 ウルスラの家で、キキは空を飛ぶことについて以下のように語っています。

キキ「私、前は何も考えなくても飛べたの。でも、今はどうやって飛べたのかわからなくなっちゃった」

ウルスラ「魔法ってさ、呪文を唱えるんじゃないんだね」

キキ「うん、血で飛ぶの」

ウルスラ「魔女の血か。いいね、あたしそういうの好きよ」

(5)「相変わらず下手ねえ!」とは

 キキが実家から飛び立つ際、母親が「相変わらず下手ねえ!」と心配そうに叫びます*7。ほうきに乗って飛び立つ動作が下手、ということであれば、それ以降の本編で飛ぶ際の動作も下手に描かれるはずです。

 なお、キキが飛ぶ際に不安定な様子が見られたのは、

  • 母親のほうきにまたがって飛び立つシーン
  • 雷雨の中で雷が間近に落ちた際に少し揺らいだシーン*8
  • 貨物列車から飛び立った際に木にぶつかるシーン*9
  • 町中を飛んでいた際に観光バスの前に飛び出してしまい、道路上で危険な飛び方をしてしまったシーン*10
  • 魔法が弱くなり、飛ぶ力がなくなったシーン*11

 などです。それ以外での描かれる飛び立つ際の様子を見ると、少なくともウルスラから黒猫のぬいぐるみを受け取ってから飛び立つシーンではスムーズに飛び立っています*12

 この点を考慮すると、キキが「相変わらず下手」なのは、「慣れていない箒でいきなり飛び立つこと」なのではないのでしょうか。

 そう考えると、後半のデッキブラシでいきなり飛ぶシーンは、スランプ中だったキキとしても元々苦手なことにいきなり取り組むなど、かなり無理をしていたと考えられます。

3. デッキブラシ目線で考える

 さて、ここでデッキブラシになったつもりで考えてみましょう。親近感を持たせるために「デッキブラシくん」と以下では呼びます。

 デッキブラシくんのイメージは......アラジンの魔法の絨毯くんのノリで考えてみてください。魔法がかかっていて飛ぶアイテムであり、喋りはしませんが、その中にある程度の自我が入っているイメージでお願いします。

※なお、「魔女の宅急便(1989)」と、「アラジン(1992)」ですので、アラジンのほうがあとになります。

(1)おじさんと共に生きてきた「箒生」

 デッキブラシくんはおそらく、持ち主のおじさんと共にこの街で暮らしてきました。この街には長らく魔女はいなかったため、空を飛ぶ箒に出会うこともなかったことでしょう。

時計塔のおじさん「ああ、魔女とは珍しいな」*13

キキ「おはようございます。あの、この街に魔女はいますか?」

時計塔のおじさん「いいや、最近はとんと見かけんなあ」

バーサ「黒猫にほうき。ほんとにひいばあちゃんの言ったとおりだわ!」*14

 箒やデッキブラシは人に使われ、地面や床の上を掃除するのが役目です。故に、デッキブラシくんが移動したことがあるのは、おじさんが運んでいく先の街中や建物の中ばかりだったと思われます。街の通路の道順や、窓の外から見下ろす景色は日頃から見慣れていたことでしょう。

 それ以外の在り方を示す姿は、伝聞で聞いたことはあったかもしれませんが、デッキブラシくんも実際に見たことはなかったと思われます。

(2)「飛べ」と言われた日

 ある時、この街には珍しい魔女の娘が、このデッキブラシを貸してほしいと言ってきました。されるがままに手渡されたデッキブラシくんは、衆人に囲まれる中でいきなり上に跨がられ、なにかをされます。これまでに経験したことのない処置をされ毛先が毛羽立ち、少しだけ浮くことができるようになりました。

 自分が宙に浮くことができたことに半信半疑だったデッキブラシくんでしたが(推測)、それもつかの間、魔女に「飛べ!」と指示されます。壁を蹴り上げながら飛び上がるうちに、今まで馴染み深かった地面はすっかり遠くなり、屋根の上まで来てみたものの、その高さにデッキブラシくんはすっかり怖くなってしまいました(推測)。恐怖のため上空でしばらくふらふらと飛んでいると、遠くに飛行船が見えます。魔女の指示では、そちらに飛べば良いようです。怖くなったデッキブラシくんは、地面の上を行こうと急に高度を地面近くに下げようとしますが、乗り手の魔女は屋根にぶつかってしまいます。デッキブラシくんはテラスや通路の中を通って飛行船の方角に向かおうとしますが、魔女は再び屋根の上まで高度を上げるように指示してきて、そのうえ「まっすぐ飛びなさい、燃やしちゃうわよ!」と脅してくる始末です。

 時計塔に飛行船がぶつかり、その様子を見た魔女は「もっと早く!」と叫びました。ことの重大さを理解したデッキブラシくんは、迷わず再び勝手に地面スレスレを飛行し、箒生の中で最高速度で飛行船に近づいていきます。鞍上の魔女は再び高度を下げたことに「こらー!」と怒っていますが、今はとにかく善は急げ。地面の近くならば、道もわかるし怖くありません(推測)。車の間を縫うように飛び、あっという間に時計塔広場に到着しました。

(3)屋根よりも高いところ

 いきなり徴用された上、慣れない空中を飛ばされている中、そこには飛行船からロープにぶら下がる一人の少年が。鞍上の魔女はその少年を助け出そうと、再び宙高く跳ぶようにと指示してきます。

キキ「こら、いい子だから言うこときいて!」

 しかしそこは、屋根よりもはるか高い位置。デッキブラシくんも覚悟を決め少年の元へと近づきますが、やはり地面が遠くなると怖い。高所恐怖症のため、落ち着いて少年に近づくことができません。ガタガタと上下に大きく揺らいでしまいます。

 少年の手がロープから滑り落ち、少年が落下していきました。屋根すら見下ろせてしまうその高さでは恐怖で身がすくんでいたデッキブラシくんも、彼の元へと急ぎます。しかし地面が近づくほどに、デッキブラシくんの恐怖心も和らいでいきました。

 そして、建物の屋根よりも低い高さ(おおよそ3階建ての建物の窓の高さ程度)のところで、デッキブラシくんは少年のもとへ追い着きます。そこで魔女も無事少年の手を掴みました。

 高所恐怖症のデッキブラシくんでも、窓と同じ高さまでなら安定して飛行できたのです。

 少年を救い出し、デッキブラシくん(と鞍上の魔女)はヒーローになりました。周囲の人々の歓声の中、デッキブラシくんはゆっくりと優雅に舞い降ります。持ち主のおじさんも誇らしげです。

掃除夫「あのデッキブラシはわしが貸したんだぞ!」*15

 その武勇伝は街の子供達にも知られることになり、魔女のコスチュームの必須アイテムとして、「黒のワンピース、赤の大きなリボン、手にはデッキブラシ」という組み合わせが真似られるようになりました*16

(4)高所恐怖症の克服

 エンディングで、キキはデッキブラシを愛用し、それで飛ぶようになりました。

 ジジとリリーの子どもたちを乗せたキキは、デッキブラシにまたがり街を見下ろす高さを飛んでいます。初飛行でヒーローとなったデッキブラシくんはきっと、その後高所恐怖症を克服したのでしょう。

(5)もうひとつの、怖がりの箒

 デッキブラシくんが空を飛ぶにあたって最終的には恐怖を克服したわけですが、この経緯から「ほうきにはある程度自我がある」前提で見ていくと、もうひとつのほうきの感情も見えてきます。

 キキが初めて「海の見える街」に来た際に、観光バスの前に飛び出した後、複数の車の前で危険な飛び方をした母親の箒。その後車道から離れたがるように飛び去ります。

 人混みをかき分けるように勢いよく飛び、人通りの少ない通路へと逃げ込みました。このときのキキの様子は「箒を操縦する」というよりも「箒が勝手に逃げ出すところにしがみついている」ように描かれています。

 もしかするとこの時は、母親の箒くんの意思で飛んでいた可能性があります。車にぶつかって粉々になりそうになったことにびっくりして、車が怖くなり、車の前に飛び出すのが嫌で、車道から逃げるように飛び去ったのかもしれません。だからこそ、車の見えない狭い道でようやく落ち着いて着陸できたのかもしれません。

4. おわりに

 半分くらい妄想で補完してしまいましたが、こういう視点でほうきたちの挙動を見てみると、そのむちゃくちゃな動きに説明が付きます。今度「魔女の宅急便」を見る際には、ぜひこのほうき視点から飛び方をみることを楽しんでください。

 「魔女の宅急便」は、うちの2歳児もジジのことが大のお気に入りの作品です。ぜひ小さいお子さんがいるご家庭でも見てみてください。

*1:本編1時間32分ごろ〜

*2:本編6分ごろ

*3:本編11分ごろ

*4:本編38分ごろ

*5:本編1時間20分ごろ

*6:本編7分ごろ

*7:本編7分ごろ

*8:本編11分ごろ

*9:本編14分ごろ

*10:本編16分ごろ

*11:本編1時間17分ごろ

*12:本編44分ごろ

*13:本編15分ごろ

*14:本編53分ごろ

*15:本編1時間37分ごろ

*16:本編1時間42分ごろ

私にとっての「おもしろさ」とは? - 宮崎駿作品からの分析

 私自身の好きな映画はたくさんありますが、好きな映画の中に共通する要素にはどんなものがあるのかについて、考えてみた結果のまとめです。「その映画の好きな所」ではなく「私はどんな要素があるとその映画を好きになってしまうのか」という観点からの分析です。

0. はじめに

 10代の頃から物語の端くれを書いてみては挫折することを繰り返してきました。そんな中で、自分が物語を作る立場となって考えた場合に、どんな要素を自分は面白いと感じているのかについて分析をしてみたくなりました。大ヒットするとか、メジャーデビューするとか、そういう規模の話ではありません。あえて「自分自身が楽しくなってしまう要素」に着目して、自分のために自分好みの面白い物語を書けるようになるには、どこを工夫したらよいか、という視点から分析しています。

 今回は、宮崎駿監督作品の内、自分が好きな以下の作品をベースに分析をしてみたいと思います。

※注意※

  • 私自身はシナリオ作成について専門的な勉強をしたことはありません。そういう文献を読んだこともありません。一部は車輪の再発明になっている部分もあると考えています。
  • あくまで自分用のメモなので、適宜補足更新していく予定の記事です。
  • トップガンや他の話もちょいちょい混ざります
  • ナウシカに関する私の解釈はここにまとまっています

mymemoblog.hatenadiary.com

1. 行動の説得力はキャラの意思の強さから生まれる

「ご都合主義」という言葉に怯えない

 物語を考えている最中、頭の中に必ず浮かんでくる「ご都合主義」という言葉。この言葉を気にし始めると、作中のキャラクターの行動や、得られる結果についてやや非現実的な展開を結びつけることに怯え始めてしまいます。ありえないはずのことが起きないと物語が進展しないというならば、必要なのはそのシナリオの変更ではなく、その「ありえないこと」への説得力を増すことだと私は考えます。

 

 上記の作品のなかで描かれる「ありえないこと」にはどんなことがあるかについて考えてみます。例えば以下の通り。

 これらは一見非現実的なハイスペックさに見えるのですが、それでも、「この人ならやりかねない」という説得力があります。説得力があるからこそそれが突飛な展開、取ってつけたような設定、として受け取られず、違和感なく観客に受け入れられるのだと思います。

 この説得力が足りないと、「なんでいきなりそんなことできちゃうんだよ」と怒りの感情が出てきてしまいます。一方、説得力が足りていると、このような超常的なハイスペックさはむしろ、「かっこいいなあ」「このキャラならこのくらいやっててもおかしくないよなあ」「自分もやってみたいなあ」と思わせるような、憧れのポイントとして記憶されます。

 つまり、「ご都合主義」というのは、非現実的な展開、非現実的な能力が問題なのではなく、そこに説得力を伴わないままそうした展開がねじ込まれてしまうことが問題なのだと私は考えます。よって必要なのは「そういう行動をしかねない人間である」ということへの信頼感をいかに構築するか、という点だと考えます。描きたいものがあり、それに説得力がないとき、それは「説得力がないから描写を止める」のではなく、「説得力さえつければそれを書いてもいい」と考えればよいのだと思います。

 「ご都合主義」と言われかねない展開事態が禁忌/悪というわけではないのです。

 

説得力はどこから生まれるか

 上記でさんざん「説得力」と書いてはいますが、それはどこから生まれるのでしょうか。私は、下図のような形で「説得力」が生まれると考えます。

(1)意思の強さ、望みの強さ

 そのキャラクターが何を望んでいるか。そして、「その望みのためならばなんだってできる」と思っているか(=意思の強さ)。そういう点をきちんと練り込んだ上で描写をすることが重要だと私は考えています。観客がそのキャラを見たときに、「ああこのキャラはもうこれに関しては覚悟が既に決まっているな」と思わせられたらOKと言えます。

[ラピュタでの例]

  • パズー:父さんが見たというラピュタを実際に見てみたい
  • シータ:自分の家系に隠された秘密についての真実を知りたい
  • ムスカラピュタのちからを手に入れたい
  • ドーラ:最高の財宝がほしい

 宮崎駿作品のうち、私が面白いと感じられる作品の共通点としては、以下のような特徴があると考えています。

  • 意思をかためたきっかけ→最低限の「語り」で行われる。描写は鍵となるポイントのみ描く。
  • キャラクターの意思の強さ、望みの強さ→言葉ではなく、日頃の些細な「行動」からにじみ出る。ジャブとして観客に予め示しておく。

[例]

  • ナウシカのきっかけ→幼少期の王蟲との接触+「父や皆の病気を治したくて」と言葉で語る。
  • パズーのきっかけ→父とラピュタの話。
  • シータのきっかけ→祖母から教わっていた不思議な話の数々、「誰にも渡してはいけない」ことへの疑問を抱いていたことなど。

 

(2)説得力をもたせる≠全てを説明する

 この一段階前としての、何かのきっかけで「望みを持つようになる」「迷っていたけどだんだん意思が固まってくる」という過程に重きを置いた描写になると、比較的私の琴線に触れない作品になってしまいます(そういう作品に名作も多いですが)。物語の尺や、キャラクターの成長を描くなど、そういう面でのメリットは少なくありません。しかし実はこうした描写に頼ってしまうと、「全体の情報量が落ちてしまう」ため、作品としての濃度が下がってしまうと私は考えています。長期連載やTVシリーズならば描くべき要素なのでしょうが、劇場版や読み切りサイズの尺ならばそこは落としてもよい部分と考えます。

 個人的な見解として、この段階を敢えて本編で描くのではなく、それを読んだ/見た人間がその過程をありありと想像してしまうような、気づいたら二次創作を始めてしまうようなものが、とてもよい描写なのだと思っています。「これだけの行動や、これだけの関係性に至るには、それまでにどれだけの積み重ねがあったことだろう」と作中の行動から観客に想像させることが重要なのです。そしてそこの過程を描くべきは作者本人ではなく、それを受け取った側の読者が想像で埋め合わせれば良いことなのだろうと思います。

 特に、作品の濃度や密度を上げ、テンポを保つためには「語りすぎない」ことも重要です。観客の把握力を疑い、「なぜそうなったのか」を説明しすぎると、説明がくどくなりすぎてテンポも落ちてしまいます。観客を信頼し、最低限の説明に済ませ、その間に起きたことは二次創作で勝手に埋め合わせてもらう、というような描写で済ませる勇気も必要なのでしょう。

[例]

 以下の様子は、作中のささいな描写から推測はできるが、直接的な描写はない。しかし観客は本編の情報から好きに想像して埋め合わせることができる範囲となっている。

  • ナウシカが子供の王蟲との別れから腐海遊びをするようになるまでの期間。
  • ナウシカが皆の病気の原因を突き止めるために地下室で研究している期間。
  • パズーが父と過ごしていた日々、父が死んでしまってからシータに出会うまでの間の生活。
  • シータが家族と共に生きていた頃から、一人で暮らす日々、そしてムスカに攫われるまでの期間。
  • ムスカラピュタの話を知り、手に入れようと動き始めシータをさらうまでの期間。

※上に挙げたジブリ作品とは異なりますが、「トップガン」や「トップガンマーヴェリック」も同じ構造を利用していると考えます。ゆえにあの作品群は濃度が保たれテンポが維持されていると言えるでしょう。

  • マーヴェリックが父と母を喪ってからパイロットを目指すまでの期間
  • マーヴェリックがグースとペアを組むまでの期間
  • マーヴェリックとアイスマンが握手をしてから「トップガンマーヴェリック」までの30年間

 などなど......

 

意思の強さバトル

(1)意思の強い人間を複数用意する

 「既に意思が固まっており、腹をくくっていて、望みがはっきりしているため、行動の端々にその意図がにじみ出るキャラクター」という存在が、作中にどれだけ多く描けるかということが、作品の面白さと比例すると私は考えています。

 主人公やヒロインの意思を強くすることはできますが、それをさらに多くの勢力に、なんなら敵側までに徹底しようとすると、かなり難易度が上がってきます。しかしここを維持できるようになると、作品の面白さの質が一段上がると私は考えています。

 この「意思の強さ」の根拠に、安易に悪意や狂気(人間を滅ぼしたい、特定の人間への復讐に全てを巻き込む、等)を持ってきてしまうと、そのキャラクターの格がやや落ちることになってしまいます。敵の行動指針ですら、芯の通ったものとして描くことが、魅力的な物語の重要な要素になるのだと考えています。

[例]

 加えて、敵の内部でも意思が割れたりしていると、その数だけその場の意思や勢力が分裂し、途中で思惑が交錯しぶつかり合うことになります。そうした側面があると、展開の進み方がより複雑になり、面白さが増していきます。(例: ムスカと軍、トルメキア本国とクシャナ、など)

 

 また、敵だけではなく周囲のキャラクターも重要です。迷いや混乱を担うような「普通の人々」が多く、彼らが権力を持っている作品ではやや面白みが欠けてしまいます。そうしたキャラクターたちは描くことがあっても、彼らの意思よりもより強い意思と権力をもつ人間が彼らの行動指針を決める(覚悟を固めさせる)ポジションに居ると、作中の(私にとっての)不快感を減らすことができます。

[例]

  • ミトや城おじとナウシカの関係
  • ドーラ一家の息子たちとドーラの関係

 覚悟が完了しきっているキャラクターが多ければ多いほど、例えそれがモブキャラであったとしても、その集団の意思が反映されやすくなります。背景に居る集団の持っている意志がどんなものなのかを考えながら背景を描写すると、その場の生活感や価値観がぐっと上がります。

 またそういう描写があると私自身が見たときに「面白い!」と感じる頻度が上がっていくので、自分が物語を書くならばそこに注意をすべき、ということになります。

[例]

  • トルメキアの人質として選ばれてる城おじたち(最悪飛び降りて死ぬつもりだった)
  • ナウシカの身代わりになる女の子
  • トルメキアに船を襲われて最後のデッキを破城槌で破られそうになってる中で自爆の準備をしているペジテの人たち
  • ジルが殺されたと聞いてすぐに石を手に握ってた風の谷の人々
  • トルメキアに対して反乱する風の谷の人々
(2)意思の強さがぶつかり合う対象はなにか

 登場するキャラクターたちの意思が皆求め、そしてそれのためなら全力を尽くしてしまうようなものとして何があるか、を設定することが重要となります。例えば図式化すると以下のようになります。

 共通するのは、「強大な力」や「とてつもなく高い価値があるもの」などの要素を中心に据えることにより、各キャラクターの強い動機として作用しています。この「高い価値があるもの」が存在し続ける限り彼らの意思や行動は止まることはありません。彼らの意思が拮抗し続ける限りそれが面白さにつながっていき、複雑なストーリーを生み出します。

 故に、彼らの行動を止めるためには、その「高い価値があるもの」の価値が失われる必要があります。そのため上記の作品で言えば、巨神兵は崩壊し、ラピュタバルスで崩壊して宇宙へ飛んでいき、カリオストロの城の財宝は「古代の街」だったために持ち運べなかった、というオチになります。

 また上記作品だけではなく、他の宮崎作品でもこの傾向はあります。風立ちぬでは、主人公堀越二郎の「創造的人生の持ち時間は10年」の期間を、菜穂子とカプローニと軍部が奪い合っています(10年経過すると無くなってしまう)。

 もののけ姫に関しては少々複雑にはなりますが、大まかには「シシ神の首を巡って奪い合い(そして消滅する)」というストーリーになっています。

 また、この「どのような勢力が、どのような構図で物語が進んでいくのか」を、序盤でどれだけ端的に説明できるか、もストーリーのテンポに大きく関わってきます。

(3)面白さ≠展開の読めなさ

 「展開が読めない」というフレーズは、面白い作品への褒め言葉として使われることがあります。しかし、これを字の通りに受け取り、「観客の予想を裏切ることが面白さにつながる」という解釈をしてはいけないのです。予想を裏切ることが面白さを裏付けるわけではないことは、結果を知っていてもなお面白いと思える作品が実在することで証明できます。何度見ても面白い、という褒め言葉は、その点に対する評価と言えるでしょう。

 こうした面白さの中でもっとも重要な要素を担っているのは、以下の点です。

「キャラクター同士の意思が交錯し、どちらが勝つか読めず拮抗している状態」

 宮崎駿作品の根底では、以下のようなルールが背景で共有されていると考えます。

  1. 場面内で最も意志の強い者の行動が物語を駆動させる権利を持つ
  2. 意志の強さが同格であった場合はより強い力をもつ側が勝つ
  3. 意思の弱い者、覚悟なき者はどんなに行動力があっても物語を変化させられないので背景にしかならない

 意志の強い人間がその場の展開を進めることができ、意志の強さが互角の場合はもっとも力が強いものがその場の流れを持っていく。そして意思も力も互いに拮抗したとき、そこで「展開が読めない」という表現で面白さを称える評価が与えられるのだと思います。

 歴史的に結末が決まっている大河ドラマが面白かったり、「今年こそ西軍が勝つんじゃないか.....?」というジョークが出るのも、キャラクターとして描写されている意思の強さが同格で拮抗していることから生まれている魅力と言えるでしょう。

 

 また、意思が強く、妥当で、行動に一貫性があるならば、キャラクターの失敗が描かれても観客側の不快感が少ない、というメリットもあります。キャラクターが意思に基づく行動選択の末、結果的に「失敗」したとしても、それに一貫性があるならば「愚行」として受け手は受け取らないのだと思います。意思に従い努力した結果失敗したものについては、否定的な印象を残しにくいのだと思います。

[例]

  • 逃げ場のない場所でパズーを助ける目的で行われた、シータのムスカに対する体当たり
  • クシャナによる早すぎる巨神兵の起動
  • ペジテによって行われた、ペジテ市を蟲たちに襲わせる計画
  • ナウシカが救出できなかったラステル
  • 腐海の奥でアスベルを救出した際に蟲の尾に当たって気絶するナウシカ

2. 複数のストーリーを同時に動かす

交錯するときに面白さが生まれる

 複数のキャラクターたちが強い意思を持ち、互いの思惑が交錯しながら展開が進む時、そこに複数のストーリーが生まれます。この同時に進むストーリーが多ければ多いほど、展開の密度が上がりテンポが良くなり、そして面白さが濃縮されて行きます。

 「このストーリーで一本話が書けるな」と思える濃度の物語を一つの作品内に同時複数投入するのがポイントだと考えます。また、展開が盛り上がる場所ではその複数のストーリーが同時に交錯するととても白熱する場面になると言えます。

[例1]軍の要塞からのシータ救出作戦の場面

  1. ムスカと軍の抗争
  2. 石と石の呪文を求めるムスカ
  3. シータを助けにいくパズー
  4. 軍とドーラ一家の衝突
  5. シータを助けたいロボット

[例2]ナウシカの本編における大まかな筋書き

トップガンマーヴェリックに対する褒め言葉として、「映画1本に映画n本分の面白さが入っていた(トップガンエスコンライトスタッフバトルシップスター・ウォーズEP4、スペースカウボーイ、エネミー・ライン紅の豚、etc.....)」といった評価がありますが、それもまた同じことを指していると私は考えています。

展開のテンポを上げる

(1)同時に走っているストーリーを垣間見せる

 物語のピークで思惑がぶつかるのは見せ場になりますが、それ以前でも、「並行していくつかの思惑が動いている」ことを示すのは重要です。例えば、シータを追っている組織が2つあることを示すなど。

 一つの場面を丁寧に書き続けているとそこでテンポがダレてしまいます。なので、途中で別な思惑を持つものが途中からカットインしてくることによって、展開がダレずに次に進めることができます。

(2)神出鬼没なキャラは動かしやすい

 意志の強ささえ説得力を持って描けるならば、たとえそのキャラが神出鬼没であっても成立します。

 そして、どこにでも突然現れてもおかしくないような行動力のあるキャラクターが居てくれると、そのキャラのちからによって一旦閉塞したストーリーを強引に推し進めていくことができます。(例: ドーラ、王蟲、不二子やルパン、ポニョなど)

(3)察しのよいキャラは解説役にできる

 複雑な展開が起きる時、最初に予兆に気づくような察しの良いキャラがいると、観客に「これから何かが始まる」という予告を与えることができます。動物(テト、ヤックル、山犬など)や勘のいい人物(大婆様、ドーラなど)などがそのポジションにいます。ちなみにナウシカの場合はテレパスで察知しているのでだいぶ察するのが早いです。

 そして、その察した人物が何かを解説してくれると、展開の描写がやりやすくなります。

[例]

  • 大婆様の、「大気が怒りに満ちておる......」や「古き言い伝えは真であった......!」など
  • ドーラの、「あれが飛行石の力だよ!」など

※一応、ポムじいさんも解説ポジションにいるキャラと私は考えています。

 

n. そのほか

観客の感情をコントロールする

 各キャラクターを描く場合、観客がどのキャラを好きになっていくかを把握した上で描写していく。受け手がキャラクターに対してどんな感情を抱くか、親近感を持つか。そこを含めて作り手はストーリーを操縦する必要がある。

 ギャグパートや日常パート、すぐに弱音を吐くなどの場面は観客に親近感や好感をもたらす。

 一方で、プライベートが見えにくく、サングラスやゴーグルによって価値観が見えづらい場合は、そのキャラの思考や価値観、動機が見えにくくなり、観客からの心理的距離感は遠くなる。

※映画「E.T.」において、大人たちの顔がラストシーンまで見えにくい状態に保たれているのも近い作劇意図があると私は考えます。

 

以下、思いつき次第、随時更新予定。